欧州に渡った難民の知られざる過酷な生活

戦火を逃れても厳しい生活が続く

「難民の立場から言うと、自分の才能が役に立ち、必要とされていることが分かれば、前に向かって進んでいけると実感できる」とアサドは言う。アサド自身、2015 年夏に亡命を認められた。「トンネルの先に光が見えるんだ」

だが就労支援は一筋縄ではいかなかった。

オランダやドイツといった国々は、難民の就労が容易になるよう法律を改正し、何カ月も何年も待たずとも、早い時期に仕事を始められるようにした。欧州企業も何万人もの優秀な難民を受け入れ始めた。

正規雇用にこぎ着けたのはごく1部

だが難民たちが手にした職はインターンシップや職業訓練プログラムといったものが多く、長期的な雇用にはつながっていない。

ドイツでは就業している難民が3万人ほどいるが、そのほとんどが有期雇用か、政府が斡旋した簡単な仕事(時給1ユーロ程度)に就いている。そうした仕事は難民がドイツ社会と接触する機会にはなっているものの、正規雇用につながるものではない。

経済研究センター(ミュンヘン)の最近の調査によれば、難民を雇用する意向を示した独企業は数百社に上るにも関わらず、過去2年間に実際に雇用した企業はほんの一部に過ぎなかったという。別の調査によれば、これまでにドイツの最大手企業30社でフルタイムの仕事に就いた難民は60人程度だという。

ドイツポストで働くシリアからの難民(写真: Ilvy Njiokiktjien/The New York Times)

そのうち50人は物流大手ドイツポストに採用された。同社では有期雇用でほかにも100人の難民が働いている。

「欧州に来た人々の多くは非常に大きな危険を冒してきた。起業家精神をもち、非常に高い目標を掲げている」と語るのは、ドイツポストの広報、クリストフ・エアハートだ。エアハートは同社の難民雇用にも関わってきた。

もっとも発送倉庫での研修を始めたものの、仕事が合わなかった人もいたとう。「仕事が好きになれなかったのかも知れない」と彼は言う。「それともほかの環境要因のせいで仕事上のニーズを満たすことが困難だったのか」

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