「お試し管理職」は組織の活性化に有効なのか 期間限定で管理職になれる制度の効能とは?

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ただし、立候補制度には、問題点があるようにも感じます。

例えば、みながみな管理職になりたいと言って、管理職だらけにはならないのでしょうか。それには「一人が昇格すると一人が降格します。基本的に管理職の数は一定です」とのお答え。

打ち合わせ風景

社員投票で平社員に降格されてしまえばモラルもダウンするのでは、とも思いました。「確かに一時は落ち込むかもしれませんが、再チャレンジ制度があり、門戸は常に開かれています」とのこと。そして、転職者にも立候補のチャンスがあることが評判になり、優秀な人材確保にも貢献しているとか。なお、管理職立候補制度は総合職のための制度ですが、一般職の方にも諸手当を出して、不公平感の払拭に努めているそうです。

会社も元気になり業績も順調

一般に、人事セクションは会社の中枢部門で、現場の上司の意見を踏まえて、各社員の昇給、昇格等を決定します。公平性、妥当性があるように見えますが、査定された本人がその評価に納得しないこともあります。

部下に低い評価を付けられた場合、その直属の上司にも不満が残ります。そのため大企業の人事は、ことあるごとに候補者を一堂に集めて昇給、昇格試験を行います。しかし、一堂に集めて試験をすることで、その社員の能力、会社への貢献度が分かるのか――。筆者は大企業の人事制度を見るにつけ、そんな素朴な疑問を抱いていました。

どうせ個人の資質が完璧に見極められないなら、いっそ、本人のやる気に賭けてみよう。これが、千地社長の発想の原点です。もちろん、やる気ばかりで空回りする管理者も出て来るでしょう。しかし短所ばかり考えていたら前に進むことはできません。リスク回避のために、お試し期間として半年を設定。全社員の目で再評価することで、リスクを未然に防ぐ仕組みも作ったわけです。

「この立候補制度を、企業人として一人前になるきっかけにしてもらいたいと思っています。そして全社員が管理者の視点で会社の利益を考えられれば、会社が永続できるはずです」

その意気やよし。15年後の100周年に向けて、ますます発展していってもらいたいと思います。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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