「お試し管理職」は組織の活性化に有効なのか 期間限定で管理職になれる制度の効能とは?

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門戸は転職組にも開かれています。3年前に転職してきた31歳の女子社員が、社長面接で管理職に立候補しました。「営業の管理職になったら、販路を拡大して、商談件数を増やしてみせます」。そこから半年間のチャレンジが始まりました。その様子を再現すると以下のようになります。

見本市展示の様子

まずは初めて持った部下との打ち合わせで目標額のすり合わせを行います。会社紹介ビデオは、自分で撮影して編集もこなしました。外国向けに英語の紹介文も考えました。

そして展示会に出品した結果、なんと50件を超える商談の取り付けに成功しました。その成果を再度部下と共有。まだまだ目標には道半ば、とお互いを奮い立たせました。

こうして半年が経過。今度は社員全員による投票が行われます。管理職の続投を認めるかどうかの選挙です。社員の半数以上の同意を得られないと、お試し管理職は残念ながら元の平社員に戻らなくてはなりません。なお、この女性社員は頑張って目標を達成、製造や他の営業からも認められて半年後の選挙にも通りました。現在もトップクラスの課長として活躍中で、つい最近も当社期待の新商品「PCDドリル(多結晶ダイヤモンドの高品質ドリル)」の提案者の1人に名を連ねています。

給与体系とも連動

この管理職を全社員の投票で選ぶ仕組みは、同社のユニークな給与体系とも絡んでいます。

「公平な会社にしたいと思いました。性別や勤続年数などと関係なく、チャレンジする人、会社に貢献する人を高く評価したかったのです」

そこで公募制と同じ2002年に実施したのが、社員の給与体系の抜本的改革でした。営業利益の25%を社員に還元する仕組みを打ち出したのです。会社が儲かると、その額に応じて社員の給与も上がります。そうなると社員は、しっかり稼いでくれる人材を管理職に選びます。いい加減な管理職で会社の利益が減ると、収入もダウンするからです。

この仕組みには情実のからむ余地はありません。社員も必死でよい管理職を選びます。一時期はやった部下、同僚なども上司を評価する「360度評価」の現実的な運用だと思いました。

現在、管理職は5人で、うち2人が女性管理職です。「生活がかかっているので、みんな必死です」と言うのは、仕上げ部門にいるもう一人の女性管理職。「管理職になったおかげで、生活が楽になりました」と言います。

毎月、会社の経営内容を全社員に公開。管理職は工夫して各自の目標達成に取り組みます。「収入を増やすためには会社の利益を伸ばす必要があります。会社の数字が明確になれば、全社一丸となれます」(千地社長)。

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