残業地獄が「脳と人生」に与える深刻な影響 長時間労働と決別する新しい考え方

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長時間労働は今だけの問題ではなく、人生を通じて弊害が多いという(写真:わたなべ りょう / PIXTA)
2006年にワーク・ライフバランス社を起ち上げて以来、生産性の高い組織づくりを目指して900社以上の日本企業をサポートしてきた小室淑恵氏。かねてより、日本企業の残業体質、長時間労働がどれほど個人、企業、社会をむしばんでいるかを指摘し、変革への啓蒙活動を行ってきた。その小室氏が「強い共感を得た」という本が、発売1カ月で早くも11万部を突破し話題の『ライフ・シフト』だ。小室氏に、本書の魅力と、日本人の働き方改革を語っていただいた。

長時間労働は脳にダメージを与える

『ライフ・シフト』は11万部を超えるベストセラーとなっている(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

――本書のどこが、小室さんにそんなに「刺さった」のでしょうか?

長寿化時代には、「脳の健康」の価値がいっそう大きくなるというところです。著者のリンダさんが言うように、人生が70歳で終わる時代と、100歳で終わる時代を比べたとき、50歳で働けなくなることのダメージは、100歳時代のほうがずっと大きいですよね。

日本は、週49時間以上働く人の割合が他国の2倍ほどもあります。非常に長時間労働の国ですから、脳のダメージを回復させるための睡眠が最も取れていない国なのですが、リンダさんの試算によると、2007年生まれの子どもの半数が到達する年齢は日本が群を抜いて長く、107歳だそうです(他国は104歳程度)。現役時代に最も脳を酷使している国民が最も長い寿命になるとどういうことが起きるか。せっかくの長寿も、後半になればなるほどつらい状況になってしまうわけです。日本人こそ、長寿社会のリスクに最も備える必要があり、現役時代の過ごし方を考えないといけない国だと痛感しました。

――仕事に集中することで自分の成長と成果につながる、ということもよく言われますね?

日本が1960年代半ばから1990年代半ばごろまでの「人口ボーナス期」にあったころは、確かにそのような構造が社会にありました。人口ボーナス期とは、若者の比率が高く、高齢者の比率が少ない時期なのですが、そうした人口構造にある国は安い労働力を武器に「早く・安く・大量に」世界の市場を凌駕できます。一方で高齢者が少ないことから社会保障費がかさまないので、利益をどんどんインフラ投資に回して、爆発的な経済発展をする時期です。

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