残業地獄が「脳と人生」に与える深刻な影響 長時間労働と決別する新しい考え方

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逆に、労働時間の上限があると、成果を出すために「1時間当たりの生産性」をどう最大化するかがカギになります。ここで、チームでノウハウを共有して効率化を図るチーム戦が生じます。

最短で成果を出すために本気で勝負するので、育児女性、介護社員がキャリアをあきらめずに本気を出すプラス効果があります。独身者に仕事が集中しなくなり、婚活、自己研鑽に時間が使える。既婚者なら育児参加に回せるようになると、妻の職場復帰もでき、家庭にも、会社にも、プラスの効果が生まれます。

労働時間を削減すると業績に悪影響が及ぶとおっしゃる方もまだおりますが、今の状況は、逆なのです。脱長時間労働を社会全体に適応できれば、GDP600兆円の達成、出生率1.8の実現、介護離職ゼロの実現も不可能ではないと、私は思います。

日本は労働時間に事実上上限がない法制度になっています。時間外労働は月間45時間という一応の労基法がありながら、それを超えても罰則規定はなく、36協定の特別条項を結んでしまえば、1年のうち最大6カ月は労使で決めた上限まで残業できてしまう。厚労省が過労死ラインを80時間としていますが、それを超えた労使協定を結んでいる企業では月間100時間を超えた残業も合法になってしまっています。

卒業後すぐに大企業への就職は危険

――小室さんは、本書に登場する1998年生まれの「ジェーン」のような生き方をされている印象を受けました。

小室 淑恵(こむろ・よしえ)/ワーク・ライフバランス社代表取締役社長。日本女子大学在学中に渡米。1年間滞在し、ベビーシッターで生計を立てる。帰国後、インターン、大学卒業を経て1999年、資生堂に入社。2004年、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞。2005年に資生堂を退社し、2006年ワーク・ライフバランス社設立。以来、生産性の高い組織づくりを目指して900社以上の日本企業をサポートしている。2014年、安倍内閣の産業競争力会議民間議員就任。同年、ベストマザー賞(経済部門)受賞。2016年、霞が関の働き方改革を加速するための懇談会座長就任など、公務もこなすかたわら、各メディアで積極的な発言を続ける

リンダさんは、これから100年時代を生きる人にとっては、自分たちの親世代の生き方は参考にならない、と述べていますね。私は資生堂に7年間勤めたのですが、その前に1年間、ベンチャー企業でインターンをしていましたし、その前の1年間には、大学を休学して海外を放浪したこともあります。

今から20年も前のことなので、大学生を5年間やることは、就活上のリスクでしかないと思われていましたし、在学中にインターンシップをする人もほとんどいませんでした。しかし、当時圧倒的に多かった、4年間でしっかり大学を卒業して大企業に入るというような道を歩まなかったことこそが、今の私の強みになっています。

ベンチャーの論理と、大企業の論理、どちらも経験したうえで、31歳で自分の会社を起業しました。だからこそ、前提を疑い、前例のない仕組みを作り、残業ゼロ・有給消化100%で、10年間増収増益を達成しています。

いきなり大企業に就職してしまうと、自分を際だたせることが極めて難しくなります。自分と同じものの見方をする人ばかりが周りにいることになりますから。

これから100年時代を生きる若い方には、20代のころから、仕事だけで終わらない時間配分を心掛けてください。私たち40代以降の人間は、まだAIが来る前に逃げ切れるかもしれませんが(笑)、20代は逃げ切れませんので、AIが来ても太刀打ちできるだけの自分の専門性を磨いておくことが重要になります。

40代以降の先輩が、会社に24時間捧げるスタイルを期待してきても「私はまだまだ現役が長いんで。自己研鑽や多様な人的ネットワークを作る時間を重視しています」ときっぱり言いましょう。リンダさんの言う3つの無形資産「生産性資産・活力資産・変身資産」を作るための時間配分を意識していくことが重要ではないでしょうか。

東洋経済新報社 出版局
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