なぜシンカーは魔球なのか?
たったひとつの変化球が、投手の野球人生を変えることがある。1990年7月のオリックス戦で8者連続三振を記録、93年の日本シリーズで優秀選手賞に輝くなど90年代の西武黄金期に守護神として活躍した潮崎哲也(現・西武2軍監督)にとって、シンカーはそんなボールだった。
一般的なシンカーは、投手の利き腕の方向にシュート回転しながら落ちていく球種だ。ソフトバンクの攝津正やヤクルトの石川雅規、ヤンキースの黒田博樹が決め球としている。打者にとって厄介なボールだが、中でも潮崎のシンカーが“魔球”と特別視されるのは、独特な軌道を描くからだ。右のサイドスローから放たれたボールは一度浮き上がり、シュート回転しながら落ちていく。
そのすごみがよくわかるエピソードを以前、社会人野球のホンダの安藤強前監督に聞いたことがある。安藤は現役時代、松下電器(現・パナソニック)に所属していた潮崎と対戦した。「カーブを狙え」と言われて打席に立つと、「この球は本当にカーブなのか?」と戸惑いを隠せなかった。軌道をよく見ると、その球はシンカーだったという。
先日、別冊宝島2017号『「絶対エース」の魔球伝説』の取材で潮崎にその話を伝えると、彼はこう話した。
「僕のシンカーを横から見たら、カーブみたいな感じだと思います。打席に立って初めて、右バッターなら『体の方に向かってくる』と感じるんじゃないかな? 実際に一度は見ないと、軌道をイメージできないと思います」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら