大手の”8倍速く”人を育てるベンチャーのコツ テラモーターズ 徳重徹社長に聞く(下)

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入社一年目だが大手で言うと8年目の実力

ほかには、現在、フィリピン事業の全体統括をやっている社員がいる。入社してわずか1年。インターン時期を入れると2年になるが、私の感覚では大手でいえば8年目くらいの社員の力量がある。約8倍のスピード感を持っている。

ただ彼自身は若干23歳の若者。場を与えるからこそ成長しているのがわかる。人材管理、財務諸表の読み方、語学、文化など足りないとわかれば自ら勉強する。大企業のある友人は、不必要といえるような資料作りを延々やらされていると言っていた。はっきり言って、かわいそうとしかいいようがない。管理職という立場からはチャンスを与えることが必要だし、安定を築くために若手社員はチャンスをつかみ取るべきだ。

――8倍ですか!ただ経営者という立場から見ると、そのような若い社員に大きな仕事を任せてしまうのはある意味リスクではないのでしょうか。

もちろん私もリスクだと思う。だけど、最近の若い人だけでなく管理職の人も含めて、もっと昔のことを勉強してほしい。私は大学のときから古い本を読んできた。たとえば、連合艦隊の山本五十六の有名な言葉で「やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」というのは、実際にやってみせている。

今、なかなか意思決定できない人が増えている。ころころ意見を変えたら不安になる人もいるだろう。決めたことはちゃんとやるという風土が大企業には根強い。現代では物事をきっちりやろうとすることには一生懸命な社員が多いが、それがビジネスになって、本当に人材育成につながるのか。

私は若い連中に仕事に任せているが、何も若くてチャレンジ精神があるから任せるということではない。当然、人間性を見て仕事を任せる人材に値するか見極める。自分の会社には若い人がたくさんいるのも事実だ。でもレディ(準備)ができていないヤツには絶対に仕事を任せない。なんで日本のベンチャーが10億~20億円までしか売り上げがいかないのか。理由は2つある。ひとつは上場するのが目的となっているパターン。2つ目は社長自身が何でもかんでもやってしまう場合だ。仮にスーパーマンでもできることには限りがある。社長の能力以上に会社は上に行かない。合理的に考えたとしても人を育てることは重要だ。

最近は、弊社がメディアで取り上げられる機会も増え、若いやつらが入りたいとやって来ることも増えた。彼らは志望動機として「若いのに仕事を任せてくれるから」という理由を挙げるやつが多い。そのとき、私は言う。「お前の志望動機の後には“必ず結果を出す”という文言がなければならない。その覚悟がお前にあるのか」。何度も尋ねる。

毎週土曜日には営業会議と報告会をやっている。たとえば、営業で月100台のバイクを売るという目標があるとする。ただ、そのやり方がおかしいと感じたり、目標数字への進捗が遅ければガンガン怒られる。厳しく改善することで、人も会社も日々成長していく。

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