※過去の対談はこちら:
インタビュー(上): 受験で全敗した私が、英語の達人になるまで
インタビュー(中):「伝説の教師」から学んだ、最強の英語勉強法
「英語の意味は音にある」
安河内:では、石渡先生が英語教育の柱のひとつに置いていらっしゃる朗唱(暗唱)に関連して教えてください。よく無茶苦茶な発音で朗唱する人を見かけます。石渡先生や私が学生として英語を学んでいた時間は、音声などの英語素材がまだ手に入りにくい時代でした。逆に今は、素材があふれていますが、残念ながらモデルとなるような音声素材を生徒に与えず、でたらめな発音で朗唱させているケースがよくあるのですが、先生はどう思われますか?
石渡:「英語の意味は音にある」というのが松本亨博士の哲学の基盤でもありました。「無茶苦茶な発音で朗唱する」などというのは、考えられないですね。発音への注意はもちろんのこと、話者の気持ちを聞き取り、そして伝える練習が朗唱ですから。音声教材は不可欠ですね。また教師から細やかなチェックを受けて発音やリズム、イントネーションを矯正しないと、独りよがりの朗唱になりかねません。
それから、朗唱は「物まね」だと勘違いしている人も多いように思います。勉強始めた頃の私もそうだったのですが、ただ音声教材をまねればいいわけでもありません。たとえば、オバマのスピーチの朗唱大会では、オバマそっくりに話す能力より、競技者が一つひとつの言葉を大切に、自分のものとして取り入れていて、聴衆に伝えられているか、というような能力を審査します。同時に、発音の間違いは大きな減点になります。
ですから、音声教材を基に練習しながらも、聞こえてくる言葉を自分のものとして覚えて、使えるようにしていくのが朗唱では必要だと考えています。
安河内:なるほど。意思伝達という目的のために、朗誦の訓練を繰り返していくということですね。文法や語彙というのは、意思伝達を達成するためのプロセスとしてとらえられているんですね?
石渡:ええ、文法や語彙、また発音も意思伝達を達成するためのプロセスで向上させる必要があるわけですから。またこのプロセスというのを、大きな流れでとらえると、さらに大切なことがわかるのではないでしょうか。
えてして、言葉の習得はインプットがまずあって、それからアウトプットにつながると考えがちですが、その逆も真実であるということです。
そもそも人間は、オギャーと生まれて声を出すところから始まっているんです。2歳前後で子どもは言葉を話し出しますが、それまでも、泣き声から始まり、いろいろな声やなん語を通して意思伝達をしようとしていますね。その過程で、言葉が徐々にインプットされて話せるようになるのです。
にもかかわらず、特に日本人は受け身で黙々と英語を勉強しがちです。文法、語彙、発音、リーディング、リスニングなどなど、すべてしっかりと学んで、ある程度自信がついてからでないと英語を使おうとしません。そしてたとえば、リスニングをずっと続けていけば、いつか突然、スピーキングができるようになると勘違いをしているのです。
年齢やレベルにかかわらず、自分の思いを英語で話したり書いたりするアウトプットの努力をする中で、インプットも増やしていくことが大切ですね。
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