英語の達人が説く極上のスピーキングとは? 日本の英語教育を変えるキーパーソン 石渡誠(下)

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極力自分の英語で話す

安河内:さて、最後にスピーチの達人の石渡先生に、ぜひとも教えていただきたいことがあります。スピーチがうまくなるためにはどういう訓練をすればいいんですか?

石渡:私が達人などとんでもないですが、やはりスピーチもその人の人柄、人生観や人間力が問われていると思います。よいスピーチが私たちの心を打つのは、そういうことが伝わってくるからですよね。逆に形だけ整えて作ったものでは、スピーカーの人柄さえ感じることもできないかもしれません。

英語でのスピーチに関して言えば、日本人は別人格になってしまうといいますか、英語を意識しすぎて自分らしさも出ていない人が多いのではないでしょうか。下手をすると、聞き手には横柄に聞こえたり、逆に自信がなさそうな印象を与えたり、もしくは幼稚な印象を与えてしまっているのではないでしょうか。英語レベルにかかわらず、自分の心を伝えるということが、いちばん大切なことだと思います。

そのためには、極力自分の英語で話すことが必要です。私が教わったことのひとつは、原稿は日本語で書かないということでした。英訳して覚えたスピーチでは、自分が出ないですし、思いどころか、話している意味もうまく通じない可能性が高まるのです。英語力に自信がなくても、最初から自分の知っている英語で書くという訓練は、先ほどのアウトプットからの言語習得プロセスとも重なりますが、大きな力になります。そして添削をお願いしてから話す際は、自分の英語力や感覚になるべく沿った範囲で受けるといいかと思います。

また先ほどまでお話ししていた朗唱も、スピーチ力の向上にさまざまな形で生きてきます。たとえば、アイコンタクトや、声の出し方、話すスピードや、構成の仕方等々、自然と自分のものになってくると思います。私が特に勧めているキング牧師やオバマ大統領、スティーブ・ジョブズのスピーチなどは、言葉に魂がこもっています。表現法やロジック構成に加えて、英語の言霊のようなものも身に付けていくことができるのです。

このような方法で訓練を重ねていけば、英語で考える能力もついていきますし、スピーチだけでなく英語で話すということ、また英語で自分自身を表現することの戸惑いや恥ずかしさも、なくなってくると思います。

安河内:おお、その学習法、私もさっそく導入させていただきます! 楽しいお話をたくさんしていただき、本当にありがとうございました。

(構成:山本航)

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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