「毎日同じ服はおしゃれ」が招く百貨店不況 ジョブズが黒Tとジーンズを着続けた理由

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したがって、現在「ユニクロ」の購入者を階層別に分析してみると、団塊ジュニア以下の世代でその差が無くなってきています。つまり、おカネを持っている人でもユニクロを買っているのです。

ロゴをデザインした佐藤可士和氏さんもユニクロのブランドイメージ向上に大きく貢献しています。かつては、ユニクロのショッピングバックをわざわざ他のブランドの袋に入れ替えて持ち歩くこともありましたが、佐藤さんのロゴになってから、袋を持っているところを人に見せても恥ずかしくなくなりました。また、以前は「ユニバレ」(ユニクロを着ていることがバレること)という言葉もありましたが、今は着ていることを知られたくないという意識はあまりなくなった。一般的にブランド品が大好きだと言われる某自動車会社の社員にも、全身ユニクロを着ていることを隠さない人がいます。

もちろん、すべての人が毎日同じシンプルな服を着ているわけではありません。たとえば、バブル世代の親を持つ「バブルジュニア世代」が、30代前後になっておカネを持つようになったことで、バブル時代に隆盛だったブランド志向が一部で復活しています。街で観察していると、いっときより「ルイ・ヴィトン」のバッグを持つ若い女性が増えていることに気が付きます。必ずしも新しいものを買っているわけではなく、その世代の親がブランドものを沢山持っているから、お下がりをもらえるという事情もあるようです。

バブルジュニア世代は「デートはアウディで」?

さらに、吉祥寺のパルコでは、80年代にDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブランドとして一世を風靡した「イッセイミヤケ」や「ワイズ」のテナントが今年になって復活しています。

極めつけは、先日会った、ご両親が60歳前後だという25歳の女性です。彼女は、少し古風な格好をしているのですね。どう古風かというと、花柄のフェミニンなスカートを履いていて、私が大学生だった80年ごろの服装と似ているのです。彼女の親も、ルイ・ヴィトンを沢山持っていると言っていました。さらに、「デートの際は彼氏に車で迎えに来て欲しい?」と質問したところ、「アウディで来て欲しい」と言うのです。これは、完全にバブル世代の価値観。私はこれを、「隠れバブル」と呼んでいます。

とはいえ、バブルジュニア世代はバブル世代と比べてそもそもの母数が少ないし、所得も減っているので、おカネをかけてバブル時のように服を買うかというと、そうでもありません。

したがって、これからも百貨店の衣料品不況は続くでしょう。以前、百貨店の人から、「女性の社会進出でおカネを持つようになれば、百貨店にとって追い風ではないか」と聞かれたことがあるのですが、それは誤りです。

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