「毎日同じ服はおしゃれ」が招く百貨店不況 ジョブズが黒Tとジーンズを着続けた理由

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こうした服の選び方を良しとするのは、今や成功した有名人だけではありません。今は、毎日とっかえひっかえする人よりも、毎日同じような、しかもシンプルな服を着る人が「おしゃれ」「かっこいい」と思われる時代のようです。効率的かつクリエイティブに仕事ができる、あるいは自分を確立しているイメージがあるからです。

言い換えると、仮におカネがあっても、やたらと新しいものを買うよりも、買わない人の方が尊敬されるということです。そして、どうせおカネを使うなら、むしろ「伊勢丹で靴を直してもらいました」「気に入った服をもう一度買いました」という消費スタイルの方がエシカル(倫理的)だとして評価される。こうした気運というのは、30年ほど前からじわじわと広がってきて、現在はかなり大きな流れになりつつあります。百年間同じ家具を大切に使うような、イギリスはじめとしたヨーロッパ的な価値観です。これが、百貨店の不況に拍車をかけているのです。

女性の「黒スーツ」が普通になった理由

さらに、女性が仕事服により実用性を求めるようになってきました。現在、日本人の女性が仕事で黒いスーツを着ている姿はそう珍しくありませんが、そうなったのはほんの10年ほど前からのことです。それまでの女性はもう少し明るい色のスーツを着ていました。

三浦 展(みうら あつし)/1958年生まれ。82年一橋大学社会学部卒業後、パルコに入社。三菱総合研究所などを経て、99年からカルチャースタディーズ研究所主宰。代表作に『下流社会』や『第四の消費』など(写真:山内信也)

ところが、2004〜2005年くらいに社会人大学で教えていた私は、そこに来ていた女性が一様に黒いスーツを着ていることに気が付きました。そこで、「何故黒のスーツなのか」と聞いてみると、「痩せて見える」「汚れが目立たない」といった答えが返ってきたのです。それでも、当時は、おカネがある人は「トム・フォード」や「プラダ」といったブランドものを着るのが流行っていましたが、今や仮におカネがあっても、スーツ量販店のものでよい、という人が増えています。

黒のスーツというのは、基本的に異性にモテることを狙ったものではありません。仕事中は、モテなくてもいい。それどころか、女で勝負しているとは思われたくない、それよりも実用性を重視する、という考え方の女性が増えているのでしょう。仕事をしているときは、男も女も関係ない、オフィシャルな人間であるということのアピールなのです。

これは、現在女性が下着やスカート、ファンデーションにかけるおカネが減り続けていることにもつながる問題です。自らを“飾る”ためのものを買うのではなく、例えば下着であればファストファッションブランドの「ユニクロ」で、汗を吸う機能付きのものを買う。これは、男性が「歩きまわってもムレない靴下」を買うのと同じ発想です。

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