貧困者にとって「望ましい支援」とは何なのか 専門性を持つ支援者が相互協力すべきだ

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足にケガをした子供をみて「あんたケガして転びやすいんだから気をつけなさいよ」と親が手を握ってあげて、それを責める者はいるだろうか。先ほどの病院が遠い例と同じで、これは甘やかしではない。そこで転んでケガを深めたら、余計に回復、つまり社会に復帰して生産人口として社会に貢献することが遅れるならば、それは個人ではなく社会全体の損失だからだ。

最後に、結果としてすでに貧困に陥り、生活保護受給などにたどり着いた成人について。

現状の制度やアウトリーチ(積極的に当事者へアプローチする支援)のレベルでは、そもそも公的扶助の受給にたどり着いた時点で、もうしばらく立ち上がれません、働「け」ませんというケースが大半であり、ここはまず、就業支援より「休養」だ。さらにこの休養とは、単なる現金の給付と心の痛みの緩和的、対症療法的な精神科通院と薬の処方だけではなく、貧困の過大なストレスでダメージを負った脳のケア、つまり子どもの療育ケアで提言したようなリハビリ的なケアにつなげたい。

現状で医療として受けられるのは認知行動療法ぐらいだし、精神科作業療法という分野もあるが、これはかなり重い精神障害以外では活用されていない。こうした医療を貧困者支援へと拡大していく可能性や、各所のプロをつないでいくことについては、僕をはじめとしてメディアの人間も動く必要があるだろう。

受給者の共通点、パチンコ、スマホゲーム

加えてこうした支援を邪魔するものを規制したい。

これはかなり物議を醸しかねない論だが、取材活動の中で出会った生活保護受給者(ほとんどは非行少年少女の親や祖父母)の中には、確かに働「ける」状態なのに働かない人たちがいた。安っぽいステレオタイプを補強するようで慎重に発言したいが、そうした働かない受給者の多くの共通点が、パチンコ屋通いか、若い親であればスマホのゲームアプリに1日のうちの長時間を割いていたことだった。

組織売春の現場で働いていた少女の取材の中で、売春業者があまりのひどさを見かねて、親のところに「いい加減にしろ」と怒鳴り込んだという信じがたいケースに2件行き当たったが、そのうちの1例の親(母親)もまた、生活保護受給者のパチンコ狂だった。僕自身もこの母親と話をしたが、その際の母親の言葉が、最近になってようやくわかってきた気がする。その言葉とは、「パチンコ屋に行くと、勝っても負けても安心するんだよね」。

正直、濃厚な殺意が湧いた。中学を卒業したばかりの娘が売春をしつつホストの売掛問題で大トラブルを起こし、その連絡を受けても「今パチンコ中だから後でかけなおして」と、よりによって娘に売春客を斡旋している業者相手にガチャ切りをかます母親だ。その母親の「安心する」は、働かずに昼からパチンコをしに行って、「同じ状況にある他人がいることに安心する」なのだと思った当時の僕には殺意しか湧かなかったが、最近になってその安心にはもうひとつの意味があるのだとようやくわかってきた。

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