――今まではご自身で脚本を書くことが多かったと思いますが、今回は脚本に渡辺謙作さんが参加されています。渡辺さんとは脚本に関してどんなのやりとりをしたのでしょうか?
脚本を作るうえでのテーマは2つありました。ひとつはやはり、自分がいいと思っていることを理解してもらって、それを脚本に反映させてもらうこと。とはいえ、せっかく脚本家が参加しているのだから、ちょっとよくわからないなと思う部分だったり、本当だったら俺はこれしないな、というような余白をあえて作りだしてみることがもうひとつです。やはり自分のほうに寄せすぎてもつまらないですからね。今回はそこが挑戦でした。
主人公には親しみを覚えた
――自分が変わらなきゃ、という馬締くんの成長過程が、原作よりもはっきりと打ち出されていました。
そうですね。物語中の馬締くんは27歳。僕とそんなに変わらないので、どっぷりと感情移入ができましたね。これから人生に立ち向かおうとしていく馬締くんに深い親しみを覚えたので。そこだけは見失わないようにしました。
――一方、石井監督の映画にはおじさんやおばさんがたくさん出てきます。そういう世代の人に対するリスペクトや親しみの感情のようなものはあるんでしょうか?
もちろんあります。いずれ自分もおじさんになったり、おじいさんになったりするわけで。いずれはこういうおじさんになりたいな、という理想は持っていますね。それが僕の映画の中で投影されてしまう傾向があるかもしれません。
――60歳以上のベテランスタッフをまとめるのに、苦労はなかったんでしょうか?
どうなんですかね。たとえば現場に、僕と同い年ぐらいの助手がいるのですが、怒られているのをたまに見かけます。気が利かないとか、臨機応変に動けないとか、たぶんそういうことで怒られているんですけど、自分がその立場だったらもっとひどいだろうなと。もっとできないだろうなと思うんです。
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