「マイクロファイナンス」の幻想と真実 貧困層支援協議グループのCEOに聞く

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ジブチでマイクロファイナンスの実施状況を調べる青年海外協力隊員(写真:JICA)

正確な統計はありませんが、1日2ドル以下で生活する人たちの大半は小規模農家か、日雇い労働者です。途上国に住む人たちは農業用に若干の土地を持っていたり、小さな事業を経営しているかもしれません。彼らは自分で選んだのではなく、生きていくためにはそうせざるをえないから、自営業をやっているのが現実です。

こういった人々は高利貸しや質屋、親族間での貸し借りなど、インフォーマルな金融サービスに頼らざるをえませんでした。しかしマイクロファイナンスが普及したことで、もっと安く、簡単に使えるフォーマルな金融サービスを受けることができます。

携帯電話の普及が変えるマイクロファイナンス

――日本ではマイクロファイナンスは起業のための融資という印象もあります。

それはマイクロクレジットの一部にすぎません。マイクロファイナンスは草の根の活動という側面も含んでいますが、必要とされる金融サービスは職業や生活スタイルによって大きく変わってきます。起業家であれば設立資金や運転資金が必要ですが、1日2ドル以下で生活している層の中で、起業家は本当にごく一部でしかありません。農家だったら収穫の時期に合わせて資金需要のサイクルが長くなります。日雇い労働者だったら、もっと短くなるでしょう。

――なぜ途上国には貧困層を対象とした金融サービスが存在しなかったのでしょうか。

従来型のビジネスでは、BOP(Base of the Pyramid、途上国にいる低所得者層)向けビジネスがよく理解されていなかった。また金融サービスを提供しても取引コストが高いため、どうしても限られた層しか対象にできなかった。

携帯電話の普及がマイクロファイナンスを変えようとしています。CGAPの推計では世界の17億人が携帯電話を持っていても、銀行口座を持っていません。

その点でケニアの「エムペサ」(マイクロファイナンスの一種。銀行口座を持たない人でも携帯電話を使って、送金などの金融サービスを活用できる)は携帯電話を使った画期的な金融サービスといえるでしょう。エムペサについては実証研究が進んでいます。

たとえば、農村に住む、ある家族が病気になって、抗生物質が必要なのにおカネがなかったとします。もしナイロビ(ケニアの首都)で仕事をしている親戚がいれば、エムペサを介して簡単に薬代を送金することができます。金融危機や干ばつなど生活の危機が起きても、エムペサがあったほうが、問題によりよく対処できることがわかっています。

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