“超”優秀な人材が、NPOに押し寄せる理由 企業とNPOが人材を奪い合う時代

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日本の新しいロールモデルとなる「新世代リーダー」。その一人が、「新世代リーダー 50人」 でも取り上げた、小沼大地さんです。小沼さんは、マッキンゼーを経て、NPO法人クロスフィールズを創設。アジア新興国のNPOへ日本の大企業の社員を送り込む、「留職」プログラムを手掛けています。この連載コラムでは、新世代リーダーの小沼さんに、「留職」とニッポンについて熱く語ってもらいます。
クロスフィールズの仕事風景。まだシェアオフィスを使っていた昨年夏の写真だ(撮影:ヤマグチ イッキ)

いま日本のNPO業界に、ひとつの潮流が起こっている。民間企業でも引く手あまたになりそうな、“超”がつくほど優秀な人材が集まるようになってきたのだ。

ITベンチャーやコンサルティングファーム、外資系投資銀行、総合商社などといった、いわゆるビジネスセクターのど真ん中で活躍していたような人が、自らNPOを起業したり、NPOへと転職したりと、働く場としてNPOを選ぶということが急増している。

たとえばNPO業界を引っ張る「フローレンス」の駒崎弘樹さんは元IT企業経営者だし、世界を相手に大規模な活動を展開する「Table For Two International」の小暮真久さんは、僕の前職マッキンゼーの先輩だ。ほかにも、ビジネスセクターからNPO業界に飛び込んだ人は、僕が知るかぎりでも数えきれない。

ベストセラー作家であり人事の専門家でもある酒井穣さんは、著書『ご機嫌な職場』の中で「職場コミュニティーの最大の『競合』はNPO法人である」とまで書いている。企業は今や、優秀な人材の確保をNPOと競い合う時代に入ってきているということだろう。

「NPOはボランティア活動」という大いなる誤解

ただ、その一方で世間一般の「NPOで働くこと」に対する理解はそこまで進んでいないように思う。今でも、名刺を出して「NPO法人クロスフィールズの小沼です」と自己紹介すると、「ボランティア活動をされているのですね。すばらしい。で、本業は何を?」と言われて絶句することもあるくらいだ。

これは、NPOの活動をいまだに「自己奉仕のボランティア活動」と完全にイコールだと考える誤解からきている。NPOは”Non-Profit Organization”の略称で、確かにこのまま読むと「利益を出してはいけない組織体」のような印象を受ける。

だが、NPOをより正確に理解するには、”Not-For-Profit Organization”、つまり「利益追求のために存在しているわけではない組織体」であり、「社会的使命のために存在する組織体」ととらえるべきだ。NPO法人には、生じた利益を会員や寄付者に対して還元できないというルールがあるが、これは決して「利益を出すな」ということではない。

NPO法人も社会的使命を果たすには資金が必要だ。当然ながら収入から経費を引いた額はプラスにすべきだし、利益を出して将来の事業へと投資すべきだ。持続的な活動のために利益を出す必要がある点において、NPO法人も株式会社も何ら変わらないのだ。

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