「で、みんなは将来何がしたいわけ?」
「僕は、ベインかマッキンゼーに行こうと思っている。まだ入学する前からMBAのOBのマッキンゼーの人とコンタクトをとって、リクルーティングの準備をしてきたし……」(燃料会社勤務の米国人)
「中国に戻ってボストンコンサルティンググループに入る予定」(会計士のシンガポール人)
「将来的にはプライベートエクイティファーム志望なんだけど、その前にコンサルティングファームに行っておいた方がいいかな? ムーギーはどう思う? 」(IT企業勤務のパキスタン人女性)
これら一連の会話は、前回話したインシアードMBAの人たちの会合で、私が受けた就職相談の一部である。私が日本に住んでいた頃も、多くの学生から外資系戦略コンサルティングファームに向けたキャリア相談を受けてきた。日本でもどこの国でも20~30歳にかけて(ビジネス分野で)最も競争力のある若者は、コンサルティングファームや投資銀行に入りたがることが多い(最近、欧米トップスクールでは投資銀行の人気が落ちてきたが、それでも相変わらず卒業後の第一希望の一角である)。
エリート期間は、リーダーになる前のモラトリアム
こうしたエリート予備軍は、何が何でも一生コンサルやインベストメントバンカーをやりたい、と思っているわけではない。「まぁ、どうやらいちばん賢い連中が集まりそうだし、給料もサラリーマンとしては最高水準。いろんな産業や企業を見られて視野も広がり、キャリアの選択肢も増えるだろう」という、人生およびキャリアのモラトリアム的位置づけで、こうした業界を志望するエリート予備軍たちが多いのだ。
幸い私は、これらの仕事を一通り経験する幸運に恵まれたが、「これらのキャリアを経験してよかったか」と聞かれれば正直に、「最高だった。勉強にもなるし報酬も悪くない。優秀な人材に囲まれさまざまな勉強にもなった。若い人たちには強くお勧めしたい」と答える。
しかし、「もう一度これらの仕事をやりたいか」と今の年齢で聞かれれば、「絶対嫌。エリートなんか、世の中に一杯いるし」である。
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