しかしながら、やりたいことを見つけたと思って金融を離れても、再度舞い戻ってくる人もかなりいる。
たとえばドイツ人の友人(女性)で、金融業界を脱出すべくハーバードビジネススクール(HBS)に入って、卒業後にめでたく“女性が好む女性化粧品のアジア太平洋地域のマーケティング担当”に入った友達がいた。
しかし彼女は、一年も経たずウォール街に舞い戻ってきた。彼女曰く、「HBSを出た後の給料なのに、学部卒業後に入った某米系投資銀行でもらっていた給料より安いのに耐え切れなかった」そうだ。やりたい仕事でもないのだけれど、給料だけは確かにいいから舞い戻ってしまう――さすがに「Evil Industry(邪悪な業界)」と揶揄されるだけのことはある。
スタンフォードの最優秀学生は、映画俳優のマネジャーに
最後に、アメリカンチャイニーズの彼女のスタンフォードの学部時代の学友の中で、「金融やコンサル業界に行って、いちばん成功している友達は今何をやっているの?」と聞いたときの答えを紹介したい。
彼女の最も優秀な友人の一人は、アナリストでゴールドマンの投資銀行部に入り、すぐにアソシエイトに昇進してMBAを取得し、プライベートエクイティファームに3年ほどいた後に突然辞めて、とある映画俳優のマネジャーになったそうだ。
そしてもう一人の優秀な友人も、同じような金融とコンサルのキャリアで順調に昇進を重ねた後、ある日突然辞めて、今は太極拳を若者に広めるNPOでリーダーシップを発揮しているという。
最近、われらが『東洋経済オンライン』に登場したマッキンゼーやボスコン出身者のNPO立ち上げに見られるように、金融やコンサルのトップキャリアを走ってきた人が、いわゆる“世間的に憧れられる典型的エリートの先頭集団”から引退し、自分がやりたいことにフォーカスした仕事に転じる例が増えてきている。
傍から見たエリートな仕事を離れ、独自のキャリアを選んで充実した人生を手に入れた人たちが異口同音に言うのは、孔子様の時代から言われ続けている永遠の真理、「人生成功するには、好きなことをやれ」の一言に尽きる(なおコンサルや金融の世界が好きなことだった人が、これらのキャリアでグローバルリーダーに駆け上がる過程に関しては、また今度書かせていただきたい)。エリート意識というセコい見栄や呪縛に人生が縛られるようでは、せっかく選択肢を広げるために頑張った勉強がムダになってしまうのだ。
この意味で「好きなことを探す」というのは人生最大の勉強であり、「好きなことを探す手伝いをする」のは親や教育者として子供に与えられる人生最高のプレゼントであろう。
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