「マイクロファイナンス」の幻想と真実

貧困層支援協議グループのCEOに聞く

2006年にムハマド・ユヌス氏とグラミン銀行がノーベル平和賞を受けてから、貧困削減の切り札のように語られてきた「マイクロファイナンス」。
ユヌス氏が始めた「マイクロクレジット」(小口の融資)は数十ドルから数百ドルの資金を融資することで、途上国の低所得層に、金融サービスへアクセスする機会を与えた。貸し倒れリスクが大きいとみられていた人々が、マイクロクレジットの普及に伴い巨大な顧客として顧みられるようになった。
マイクロクレジットはしだいに保険や貯蓄へと対象になる金融サービスを増やし、「マイクロファイナンス」(小口の金融)を形成するに至っている。米国NPOのマイクロクレジットサミットキャンペーンによれば、2011年末時点で世界には3700のマイクロファイナンス機関があり、その顧客数は1億9500万人に上る。
が、最新の研究では、マイクロファイナンスによる貧困削減の効力は喧伝されるほどではないと指摘されている。京都大学大学院経済学研究科の高野久紀・准教授は「マイクロファイナンスは貧困層に金融サービスを提供することができるという点で金融の革命といえるが、貧困から脱出させるほどの力はない」としている。
マイクロファイナンスが普及する以前でも、途上国には年間100%を超える高利貸しや親族間の貸し借りなどインフォーマルな金融サービスがあった。金利が高くても起業する人はいるし、借金をする人もいる。「マイクロファイナンスが広まったことで低金利の融資を受けられるようになった。しかし、この程度の少額融資ではローリターンしか得られない」(高野准教授)。農村部に住む女性がマイクロクレジットを使って小さな日用品店を始めても、生活を少し改善させる程度の効果しか得られない。抜本的な貧困削減にはもっと広範囲な対策が必要だ。
マイクロファイナンスの正体とは何か。マイクロファイナンスに関する統計や研究調査を発表する研究機関のCGAP(貧困層支援協議グループ、本部ワシントン)のティルマン・エアベックCEOに聞いた。

途上国の貧困層も金融サービスへのアクセスが容易に

――途上国では金融サービスにアクセスできない人が多いということが問題なのでしょうか。

そのとおりです。CGAPのミッションは貧しい人たちが金融サービスにアクセスできるようにすることです。世界銀行が2012年に出したリポートには、全世界の就労人口の約半分はインフォーマルセクターであると書かれています。この数字は世界の平均であって、日本のような先進国も含まれています。だから実際には途上国のインフォーマルセクターで働く人はもっと多いと考えられます。

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