「原発推進派」と批判されても、貫くべき「義」

経産省政務官として経験した「原発問題」

山田方谷は、この大事業をどのように成し遂げたかの秘密を、32歳のときに書き上げた「理財論」の中で明かしています。その一部を引用し、今回は意訳をできるだけ排して、解釈を施せば、次のとおりになります。

「夫(そ)れ天下の事を制する者は、事の外に立ちて事の内に屈せず。而(しか)るに今の理財者は悉(ことごと)く財の内に屈す」(天下を治める者は、一つひとつの課題に拘泥せず、大局に立つ。ところが、今の財政家は、みんな財政の狭い世界にとらわれてしまっている)。

まずは「財政再建は、細かい収支のつじつま合わせに埋没せず、より大きな国家的視野でさばかなければならない」と喝破します。

「義利の分一たび明らかになれば、守るところのもの定まる。日月も明らかとなすに足らず、雷霆(らいてい)も威となすに足らず、山獄も重しとなすに足らず、河海も大なりとなすに足らず。天地を貫き古今にわたり、移易すべからず。また何ぞ飢寒死亡の患へるに足らんや。しかして区々たる財用をこれ言ふに足らんや」

(大義と利益の区別がいったん明らかになれば、守るべき道が定まる。自ら定めたこの決心は、太陽や月よりも光り輝き、雷や稲妻よりも威力があり、山や牢屋よりも重く、大河や海よりも大きく、天地を貫いて古今にわたって変わらない。餓えも死ぬことも心配に及ばない。まして、財政再建など細かい話なぞ言うに足ない)。

「義」と「利」の違い

大きな視野とは、「義」を明らかにすることです。「義」とは「人として守るべき正しい道」です。それは当然、それぞれの「国家の物語」に沿った国民の歴史や伝統や道徳心から生まれる価値観であります。

他方、「利」とは、欲望に基づいた現実的な利害打算です。この2つを区別して、「義」を明確に掲げれば、おのずと進むべき道は定まります。そうすればしめたもので、決心が芽生えます。この決心は、時代の流れに振り回されない、不動のものです。あとは自分の生活がどうなろうと、生死がどうなろうと迷いはありません。ましてや、財政再建のような細かいことなどは、まったく心配に及びません。

「言うは易し」でしょうが、山田方谷は、この方針の下で、現在のわが国の財政よりもなお厳しい台所事情を根本から改善してみせたのです。

次ページ個人としての「義」の一例
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