「原発推進派」と批判されても、貫くべき「義」 経産省政務官として経験した「原発問題」

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最初に再稼働すべきかどうかの対象となったのは、福井県の大飯原発。その安全性については、専門家の検討に任せながらも、私としては、翌年の夏に再稼働が「安全かつ必要」と判断された場合に、それが円滑に実行できるための準備を進めていかなければなりませんでした。

ところが、当時は、福島の事故の対応をめぐり、経済産業省は世間の非難にさらされていました。私が、担当部署から説明を求めても、役人たちはかなり萎縮をしているように見えました。枝野幸男大臣が原発に対して極めて厳しい考えをお持ちだったことや、マスコミをはじめ「経済産業省が性懲りもなく、原発を推進している」との批判を恐れていたのでしょう。

問題は「大飯原発の再稼働が決断された場合、福井県の議会や行政の承認をもらう必要があるが、その時期をいつにするか」でした。役人から答えを求めても、あまり明確な方針がなく、「まあ、来年6月の定例議会くらいに間に合えばいいのでは」といった返答でした。

危機感を持ち、大臣に直談判

私は、事務方が6月議会をメドとしていることは、危機管理の観点から「まずい」と思いました。なぜなら、夏の電力に対する需要が高まるのは、早ければ7月です。国民の幅広い議論が予想されるので、最初から6月に照準を当ててしまうと、ちょっとでも議論が長引いたり、紛糾をしたりしたら、とても夏のピーク需要に間に合わないからです。

また、福井県側も、こういった極めて重たい話が、急に来ても困ります。あらかじめ、国としての方針を示しながら、安全性を含めさまざまな情報を交換しながら、日々話し合って、調整をしていく必要があるのです。

危機感を持った私は、さっそく大臣に直談判をしました。

私からは「再稼働をするかどうかは、まずは、最終的には専門家の安全性に対する検討を待たなければならない。そのうえで、再稼働をするかどうかの最終決断は、枝野さんをはじめ野田総理にしてもらわなければなりません。

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