日本には「国家の物語」が欠落している 財政再建が進まない本当の理由

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グローバル化が急速に進む中、われわれは「日本人とは何者で、日本とはどんな国なのか」という問いに直面しています。 この連載では、米国で18年間を過ごし、財務官僚、首相補佐官として、政治の最前線を見てきた著者が、自らの経験や日本の歴史を踏まえながら、日本に今必要な「物語」とは何かを考えます。 
日本は米国など他国と比べて、国家意識が希薄と言わざるをえない(写真:AP/アフロ)

「真の愛国心」はどこから生まれるか

今回から開始するこの連載で私が伝えたいこと――それは、日本が大国として生き残るためには、小さな損得勘定にこだわらず、熱情あふれる「国家の物語」を回復するほかに道はない、ということです。

不幸なことに、私たちは、国家としての「自分」を見失っています。いや、「国家」という言葉さえ、違和感を持たれてしまいます。ましてや、日本が「どういう国か」「国家国民として何を目指してきているのか」と問われても、さっぱり答えられません。答えられる酔狂な方がいたとしても、それはあくまで個人の勝手な考えであって、大半の国民には共有されないのです。

「自分」とは「国家の物語」です。これを取り戻すことこそが、政治が主導していかなければならない国民的課題です。日本がこれまで何を目指してきたのか。そのために、私たちの先輩たちは、いかなる思いを持って、いかなる営みを歴史に刻んできたのか。それらの使命の尊さが理解されなければ、真の愛国心は生まれません。そして、愛国心なしでは、今、日本が直面している、自己犠牲を伴う困難な課題を乗り越えることはできないのです。

大げさに聞こえるかもしれません。しかし、これが旧大蔵省で12年間仕事をし、政治活動10年、うち7年間、国会議員をやってきた者の率直な感想であり、信念です。また、私は子供の頃から、米国に18年間ほど暮らしてきました。大蔵省に入ってからも、留学2年間、ワシントンのジョージタウン大学で国際関係論の修士を修了しました。そういう体験からも、日本人の国家意識の希薄さに違和感があるのかもしれません。

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