3.11から見る日本政治の限界 元マッキンゼー・現職政策担当秘書が斬る!

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「民主主義」に抹殺された被災地・福島の声

2011年3月11日、筆者は地球の反対側にいた。ある資源をめぐる仕事でチリのマッキンゼー・サンティアゴオフィスに駐在していたのだ。真夜中、ホテルのフロントの女の子が血相を変えて部屋に飛び込んで来た。ぐっすり熟睡していた筆者をたたき起こし、「テレビを見て!」と叫んだ。スクリーンに映っていたのは、母国日本を襲う津波の姿だった……。

あの日から、もう2年が経過した。

多くの日本人は、まるであの災害がなかったかのように、元の生活に戻った。しかし、まだ平穏な生活を取り戻せていない人たちが存在していることを忘れてはならない。

昨年12月に行われた衆議院議員選挙。被災地・福島の有権者はどんな投票行動をとったのか。

日本全体では「自民党圧勝」という結果に終わったが、被災地・福島をみると、実は自民党に対する支持率はさほど高くない。津波で家族を失った復興副大臣の黄川田徹、福島県選出の玄葉光一郎は小選挙区で当選し、福島第一原発のある選挙区でも吉田泉が比例復活で当選している。

東北はもともと民主党が強い、という事情もあるが、このギャップが生じた理由を考察してみたい。

福島で圧勝したのは「棄権票」?

特に世界が注目したのは、福島第一原発事故だ。

筆者は、震災の2カ月ほど前、仲間と一緒に福島を訪れていた。すっきり飲みやすい地酒と甘みの強いイチゴ、美しい山と風情のある単線鉄道が印象に残っている。その福島で起きた事故は、国家のエネルギー戦略に転換を余儀ないものにした。

福島第一原発がある福島県第5区では、6党もの候補者が乱立した。まず、注目すべきは、福島で圧勝したのは「棄権票」だった、という事実だ。

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