「原発推進派」と批判されても、貫くべき「義」 経産省政務官として経験した「原発問題」

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そもそも判断すべき事柄が、国家百年の計のような、膨大で複雑なものであればあるほど、計算どおりにはいきません。考慮に入れなければならない変数が、あまりにも多すぎます。偶然が入り込む余地が大きいですし、人の心はとかく移ろいやすい。スーパーコンピュータでも、なかなか答えを出せません。ましてや、政治や社会や経済の情勢は刻一刻流転します。

そろばんをはじいて、右顧左眄をすればするほど、判断がぶれて、行動は中途半端になります。他方、己が正しいと思う道を突き進めば、心の中に一本筋が通り、力強い行動につながります。

これは、経営などで難しい決断をされた方には、むしろ当たり前の話でしょう。私自身、一昨年に経済産業大臣政務官に就任したときには、そのような経験をしました。

原発事故後に直面した喫緊の課題

就任1年前には、東日本大震災が発生し、福島で原発事故が起こりました。当時は、恐怖と不安から、原発そのものに対する国民的反発が極めて強かったのです。こうした中で、経済産業省の立場からは、福島第一原発の事故対応や住民救済を進めると同時に、国家のエネルギー政策を冷静に責任を持って進めなければなりません。さまざまな非科学的な情報や、実現性のない机上の空論が錯綜する。

振り返るに、そういう中で、政治家が(おそらくは戦前と同じように)強烈な世論に対して、現実的な説明責任を果たせなかったことは、自分を含めて大いに反省すべきことです。

私としては、まずは、原発の安全性を最大限確保したうえで、とにかく翌年の夏の電力需給に対応することが、喫緊の課題だと判断しました。これは産業経済の利益だけではなく、病院で人工呼吸器などで命をつないでいる方々をはじめ、安定した電力に頼る国民生活を考えてのことでした。

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