AKB学園
有効性と効率性、バランスの難しい2つの条件を成立させ続けるためには、「人」そのものの育成に投資することが必要になります。育成途上の非常に若い人材を興行の場に立たせる以上、ここは必須の条件になります。
能力の高いプロを市場から高価格で調達し、高付加価値で提供するビジネスの仕組みと、未知数だが潜在的能力が高く、若い人を集めて育成していくプロセスを見せることで付加価値を作る仕組み、両者のビジネスの成り立ちの差を理解できれば、AKB48の継続に必要なことも明確になります。
「多くのことは先人、先達がやってるんだよね。(中略)AKBも本能だけでやってきて、ふと振り返ると、これの究極の形が宝塚だなと思うんだよ」(『GQ』2月号72ページ、秋元康氏談)。
秋元氏は、AKB48の仕組みが宝塚歌劇に通じると話しています。宝塚歌劇には学校があります。そこで人材を継続的に育成し、興行を実施していることは皆さん御存じだと思います(実は宝塚歌劇の仕組みの源流は、京都花街にあります。京都花街には明治5年から学校と興行の仕組みがありました。詳しくは『京都花街の経営学』参照)。
秋元氏が気づいているように、AKB48の仕組みを継続させるためには、宝塚歌劇に通じる、メンバー全員が学びを共有する「AKB学園」のような場が必要なのです。
「夢」とリアルの両立
AKB48のコンセプトがクラブ活動であったとしても、発達段階の途上にある若者を興行の第一線に出す以上は、支援するために具体的な仕組みを運用することが、収益を上げる側の社会的な責任でもあるでしょう。
そこをあいまいにして、「メンバーの自主性に任せる」「まだ試行錯誤の段階だから」と抗弁するような運営方法だとすれば、残念ですがAKB48にかかわる経営者側の姿勢を疑われるのではと思います。
もちろん、収益を上げている側が有効性を追求することは当然です。一方で、有効性と効率性のバランスを欠いて、コストカット的に効率性を重視する姿勢は、結局、オーディションで市場から安価に人材を集めて使い捨ててしまうという、AKB48らしくない、無責任なビジネスシステムであると思います。
ビジネスシステムの視点からは、彼女たちの興行を通じて収益を上げる側が、時間やコストを負担して育てる仕組みを構築できれば、AKB48のビジネスに継続性という視点が織り込まれたことになります。
夢とリアルの両立を目指す、見えない差別化を実現しつつあるAKB48だからこそ、「峯岸みなみ丸刈り謝罪問題」を契機に、ビジネスの継続性を考えた経営が求められています。
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