AKB48のビジネスは継続できるか? AKB48を経営学で考える(下)

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もし、こうしたルールが明確に制定されて、それに従ってメンバーが行動したり発言したりした場合、皆さんはどのように思われますか?

「それって、何かおかしいかも? すべて管理されてしまったら、AKB48らしくない……」

きっとそんな違和感を覚えられるだろうと思います。ブランドイメージを守るために、ルールや規制で個人の行動を縛ってしまうと、逆に若い彼女たちの必死さ、一生懸命さが失われて、アイドルだけど会いに行けるというリアル感まで失われてしまうように感じられます。つまり、この方法で効率性を追求すると、「会いに行けるアイドル」というAKB48らしい雰囲気がなくなり、結果として有効性が損なわれるだろうと予測されるのです。

つまり、AKB48がAKB48らしさを維持して、ビジネスを継続するためには、ルール制定は解決につながるどころか、ビジネスコンセプトを損なうものになります。だから最近になって秋元氏が、「恋愛禁止条例」というものはないと述べているのかもしれません。

イノベーションを生み出す源泉

AKB48のビジネスのポイントは、メンバーが成長途上で、その変わっていくプロセスをエンターテインメントの中に織り込んでいることです。

AKB48のビジネスシステムは、メンバーの変化のプロセスをファンがリアルに楽しむことができることによって成り立っています。だから、じゃんけん大会でメンバーを選抜するような仕組みを、ファンが受け入れるのです。あるいは、総選挙でまだ十分に活躍できていないメンバーを、ファンが応援するのです。また、次のセンターは誰か、メンバーの中の誰が育ってくるのだろうかと、楽しむことができるのです。

したがって、歌やダンスの能力の育成だけでなく、10代から20代前半という年齢的に未成熟であるメンバーが個人として成長し、かつプロのエンターテイナーとして求められるようになっていくことを、リアルに見せることが重要です。

ですから、メンバー自身がビジネスのイノベーションの源泉でもあります。秋元氏は総合プロデューサーですが、無から有を生み出すことはできません。メンバーという素材があるから、付加価値が生まれる。であれば、大切な付加価値を生み出す彼女たちが、AKB48のメンバーである間はもちろん、卒業後も羽ばたいていけるように、1人の人間として育成することこそが本当に重要だと言えます。

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