釜石にカメラを向けたことは生涯責任を取る

君塚監督が映画に込めた"覚悟"

東日本大震災からまもなく2年を経ようとしている。そんな中、ジャーナリストの石井光太が、東日本大震災の知られざる真実を描き出した渾身のルポルタージュ「遺体 震災、津波の果てに」を映画化した『遺体 ~明日への十日間~』が2月23日より公開される。
2011年3月11日。東日本大震災により発生した津波で、岩手県釜石市は未曾有の被害を受けた。遺体安置所に選ばれたのは、廃校となった中学校の体育館。次々と運ばれてくる遺体を前に現場は混乱する。
本作の「災害や被災地への関心を薄れさせてはいけない」という君塚良一監督の熱い思いに共鳴したのは、主演の西田敏行をはじめ、佐藤浩市、佐野史郎、緒形直人、勝地涼、國村隼、酒井若菜、沢村一樹、志田未来、筒井道隆、柳葉敏郎といった俳優陣だ。

この映画は創作がない

――所轄と本庁との対立軸を分かりやすく描き出した「踊る大捜査線」の例を出すまでもなく、世界観をきっちりと固めたテンポのよい物語作りが君塚ドラマの醍醐味だと思います。しかし今回はそれを封印し、淡々としたドラマづくりが印象的でした。やはり東日本大震災を題材にしたということで、気を遣われた点があるのでしょうか?

脚本にいちばん大事なのはストーリーラインなので、そこを強化していくのは脚本家のいちばん大切な仕事です。たとえば僕の監督作である『誰も守ってくれない』などは、とある事件をモデルにしたにせよ、創作も加えてストーリーを強化していく作業がありました。お客さんを喜ばせること、楽しませること、何かを考えてもらうこと、あるいは人生を変えるぐらいに衝撃を与えることなどが、僕の仕事の大前提としてあるわけです。

だけど、今回こういう作品になったのは石井さんのルポルタージュに衝撃を受けたことが大きい。釜石で起きた事実をありのままに伝えることが僕の役割だと思ったし、それをもっとうまく伝えるために、僕の今までの脚本術や演出術を使うことはできないと思った。つまり、そうやって伝えることにあまり意味を見いだすことができなかった。だったらありのままに描くほうがいいと考えた。当然のごとく、この映画には創作がありません。それが面白いのか、つまらないのかという判断さえもなかった。ただ伝えたいというだけで。だから僕にとっても新しい試みだし、特別な作品だと思います。

(C)フジテレビジョン
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