――東野圭吾さんが書かれた原作を最初に読まれてどういう印象を受けましたか。
「究極の個人情報であるDNAが、政府や警察組織によって個人の性向を含むすべてを把握するために使われる」という、その怖さがジリジリと通奏低音のように響いてきた。東野作品なのでエンターテイメントとしても純粋に面白いが、一方、現実の中で、すでにそんなことが検討され、実現に向けて動いていてもおかしくないと思わせるリアリティもある。個人情報が、いろいろな形で世に流通している時代ですからね。
現代社会は「多重人格社会」?
今の若い子も含めて多くの人は、ネットショッピングなども当たり前になってきている。でも便利になる一方で、落し穴は確実にある。購入した結果、その履歴を通じてその人にお勧めの商品が送られてきたり。それは自分の嗜好を他者に決められていることでもある。作品を通して、現代社会の構造そのものと、そんな社会が可能性としてはらんでいる「主体性の喪失」という根本的な問題にたどり着けるのではと考えた。
それと、デジタルとアナログ。デジタルとアナログというのは、平たくいうと1かゼロの世界ですよね。二宮和也君が演じる神楽龍平は「龍平」と「リュウ」という2つの人格を持っている。多重人格というと特別なことと思われがちだが、複雑な現代社会で生きていくにはある種必要なこと。家庭ではよきお父さんが、外では鬼のような人だったり。付き合う相手の立場や社会的地位によって、いくつもの顔を使い分けなければ、人は生きていけない。
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