原田泳幸の懐刀は希代のマックバカ

OB・藤本孝博に聞く(上)

たかがマック、されどマック

「あのな、物語を想像してみないか」と言った。「東京のこの副都心で働いているサラリーマンは、世間的には認められているビジネスマンだ」と。ここに買いに来ている30代、40代のサラリーマンは家を買ったばかりで、2時間ぐらいかかけて通勤していたりする。満員電車に揺られて、昼休みも時間がないからマクドナルドに来るんです。もちろん速いのも大切。でも「ここでうちのクルーが、この人たちの1時間の休憩に何かひとつほっこりするものをお届けすることができたら、それが本当のサービスになるんじゃないのか」と。

マクドナルドでスピードはすごく大事。朝一番にコーヒー1杯買いに来るお客さんを必死にさばくことも絶対に必要です。ただ、その瞬間に「お仕事頑張ってください」とかわいいクルーが一言添えるだけで「何か知らないけど、今日テンション上がったわ」とか、今日この店にランチを買いにきて、かわいいクルーが「午後も頑張ってくださいね」と言うだけで午後も頑張るかと思えたらどうだろうと助言しました。

「そのためにチェックするならわかる。でも機械と機械が応対しているみたいになって、本当に伝えたいものがわかっていない。そんなことで店のビジョンなんか決められるか」と叱りました。あいつはそういうことに対する感性があるから、「そんなこと言われたの初めてです」と半泣きに言う。あいつの中で何かが弾けたんです、何かが。それからあいつの仕事ぶりが大きく変わりましたからね。

たかがマクドナルドなんですよ、たかがマクドナルド。100円で食べられて、100円で飲めるものを売っているんですから。だから、たかがと思われている。でも、そこを僕たちは「されどマクドナルド」なわけです。「俺たちにはもっとできることがあるんちゃうんか」と。伝わるか伝わらないかはお客さんが感じること、決めることです。「俺たちはどこまで行きたいか、何がしたいのかがすごく大事なんやろって。俺はそう思うけどな」と言うと、クルーにはちゃんと伝わるんですよ。クルーが変われば店長もやっぱり変わるんです。

(下)に続く

(撮影:尾形文繁)

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