原田泳幸の懐刀は希代のマックバカ OB・藤本孝博に聞く(上)

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リクルートコストは高いのに、時給もうなぎ上り。クルーが足りないから、もう精根尽き果てて早期離職率が高いという悪循環に陥っている。アルバイトは入ってくるけど、彼らを大事にするとか、ケアすることができないから早く辞めてしまう。だからずっと募集し続けなければならない。このサイクルをどこかで止めるために「今、急にコストは下げられないから、入ってきたクルーを辞めさせるな」、「妥協しないでいいやつをとれ」とリクルーティングのステップワンを徹底的に言っていました。

そうすると、若手とかキャリアの浅い店長がだんだんとよくなってくるのを実感してくる。できるやつが、少しずつ増えてくきて、お店が急によくなってくる。みんな真面目だから、スーパーバイザーもOMもそれがだんだん、転換するようになるんですよ。これで東京はだいぶよくなりました。

ようやく東京がよくなってきたかと思ったら、全国的にはリクルーティングで非常に苦戦していました。当時はリーマンショック前で比較的景気がよかったので、時給はうなぎ上りなのに、離職率は高く、充足率は低い。それでリクルーティングのプロジェクトを立ち上げてくれと原田さんに言われました。

マックボス、マックバカをスカウトする

――直々に言われたんですね。

ええ。原田さんから渡されたリクルーティングプランを見ました。でもはっきりとNOを出しました。「原田さん、小賢しいやつが片手間に机の上で作ったこんなプランじゃ話にならない。もしこのプランをやれ言うのやったら、僕じゃない人を選んでください」と突っぱねました。

そうしたら、原田さんは笑って、「どこがダメだ?」と聞くから「全部ダメ」と答えた。「僕にやれと言うんなら僕にプランから作らせてくれ」と言って作ったのが、当時のパーフェクトスタッフィングプロジェクトっていう採用計画だった。そこに必要条件を5つぐらい書いて、その中のひとつが別部署にいた鴨頭を僕の部下にくれという要求だった。

――どうして鴨頭さんを?

彼は目立っていたんです。僕が東京に来て、死んだような目をしているOCの中で、1人だけひょっとしたらこれは化けるかもしれないと思ったのが鴨頭でした。だからビシビシ叱りました。「何をしとんねん、お前は!」と言うて、いつも怒っていたような気がします。それに彼は他の人とはちょっと違う感性を持っていたんです。

そこから藤本氏による鴨頭氏への特訓が始まる。愛とゲンコツが一体なのが、藤本流の教育方針だ。

あるとき、鴨頭が新宿の店でストップウォッチを持って、ランチタイムに商品の提供時間をずっと測っているんです。で、鴨頭は僕へのアピールになると思って、すごく真面目にチェックしているわけです。僕はずっとそれを見ていて、鴨頭を横に引っ張っていて「何のために?提供時間を測っているんだ?」と聞いたら、「1秒でも速く注文をさばくためです」と答える。鴨頭を厨房の中に入れて「お客さんの顔を見ろ。提供時間は測るな。ジーっと見てみろ。どう思う」。「遅いですね」。「お前の頭にスピードの概念しかないのはどこかに置いとけ。とにかく顔を見ろ」そう言いました。

そうしたら鴨頭はジーっとお客の顔を見ている。僕が「どう思う」と聞くと、「わかりません」。「もっと見ろ」。「ボス、お客様の顔が笑っていないです」、「そやろ」と。

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