原田泳幸の懐刀は希代のマックバカ

OB・藤本孝博に聞く(上)

藤本氏は九州を経て、アメリカで数年間、研修を受けるはずだった。ところが、その人事は撤回され、原田泳幸会長兼社長の指名により、東京へ営業部長として赴任。与えられたミッションは全社の黒字を吹き飛ばすような赤字を垂れ流す都心部の立て直しだった。

原田泳幸の勅命で東京に赴任

――原田さんに呼ばれて、2005年11月に東京の営業本部長になった。当時、東京はどんな状況だったのでしょうか。

当時のマクドナルドは原田さんが2004年にトップに就任して、業績が折り返して底をついたころ。でも東京はひどい状況でした。都内のほとんどの店が赤字。冗談で「新宿と渋谷を全店閉店したらどれだけ利益が出るのか」ということが言われていたほどでした。東京の店は家賃が高くて人件費も高いから損益分岐点がとにかく高い。月商3000万円売っても赤字という店がありました。対処療法は、とにかく売り上げを上げて、無駄なコストを一切使わない。ただそれだけ。

「息子のようにかわいがってもらった」と当時を振り返る

誰も本気を知らなかったんだと思います。たとえば東京で店長をやっている社員は、多分入社して10年目ぐらいですが1度も利益を出したことがないという店長が多かった。そんな社員が利益を出そうと思うことはほとんどありません。

そもそも都内の店舗の大半が、慢性的なクルー不足でした。クルーの充足率が80%でも、そこそこ運営することができる器用な店長が多い印象でした。だから、エリアでいちばんマシな店にはできるかもしれないけど、お客さんに喜んでもらえるレベルの店舗になりようがないんです。それは僕の理想とは全然違います。

人材採用は店舗にとって死活問題

しかも、エリアの中でいちばん優秀な社員がOCになると、クルーの充足率80%でうまく回せる店長を育てる。充足率100%にする概念がない。そうすると、OC以下、80%で運営できる人が、80%で運営できない店長を指導するから、最大限70%くらいで運営できる。そうすると運営に変な技術を持った変な店長ばかりになってしまう。でも、お客さんがさばき切れないから利益はでない。だから彼らにクルーの充足率を100%にしなさいという話をするんです。

――どうやって?

まず正しい採用活動が大事です。マクドナルドのマニュアルには「リクルートのステップワンは店舗イメージの向上だ」と書いてあるんです。アルバイトに応募して来て、「こんなところは嫌だ」という店では誰も働きません。でも当時はそんな店しかありませんでした。

当時、大阪にある店舗の年間リクルートコストが20万円ぐらいのころに東京はその10倍近く使っていた。とにかくクルーが足りないから1年中、アルバイトの情報誌に募集広告を掲載していた。1回載せるといくらだけど、年間契約にしていくら節約しましたという。それで「節約ができた」と言っている連中に、「お前は永遠に浮かび上がらない」という話を店長やスーパーバイザーたちにしていました。

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