日本の「経営」と「教育」を再構想せよ 高齢化社会のグランドデザイン(上)
問題はその後、世界の工場フェーズから脱したときです。主要先進国のトップテン企業を見てみると、製造業が何社も並んでいるのは、日本とドイツだけで、ほかは軒並み金融か電力、通信といったパブリックセクターばかりです。英国はもう自動車産業もなくなり、メーカーも消え、金融が上位を占めています。
フランスもパブリックセクターがらみ、米国も一応GMは残りはしましたが、国を挙げて支援したことがはたしてよかったかどうか。IBMでさえ製造をやめてサービス業に転換しています。そうやって産業の新陳代謝を起こし、経済の活性化を図っているのです。
一方、日本とドイツはいまだにメーカーなどの第2次産業が残っているわけですが、ドイツは1トン以上の大きな製造物に強く、日本は1グラム以下のナノテクノロジーが強いといわれています。大きくて難しいわけでも、小さくて難しいわけでもない中間の製造業、たとえば家電などが、韓国や中国に取られていくのは、私はある意味で必然的なことだと考えています。
和田:私は、第2次産業は日本人に向いていると思っていて、オールドエコノミーとは捉えていないんですよ。インドではこれから3億5000万人もの中流層が生まれるといわれていますが、日本人が中流層になる過程でクーラー、カラーテレビ、カーの3Cを揃えていったように、彼らが家電製品や自動車を買うようになれば、巨大な市場が生まれます。
これが日本にとって大きなチャンスなんですが、日本製品は韓国製品より高級で高品質なんだというブランドイメージを前面に打ち出して売ればいいのに、真っ向から価格勝負をしている。
価格で対抗するにはマレーシアなど人件費の安い海外で生産しなければならないわけですが、韓国のメーカーなどは、「これはパナソニックの製品だけど、メイド・イン・マレーシアであり日本でつくったものじゃない。その点、うちはメイド・イン・コリアでちゃんと韓国人がつくっているから品質はばっちりだよ」などと言って売っているんです。
日本のメーカーの経営者は、「メイド・イン・ジャパン」が付加価値になることをまったく理解していない。
もちろん、中流層の消費意欲は一巡すれば落ち着いてしまいますから、20年、30年の延命にすぎないのかもしれません。しかし、新たな成長産業が見つからない現状では、日本のブランドイメージを高めて第2次産業で勝負をかけるしかないというのが私の観測なんです。
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