「才能ない」生意気な子供でも天職は見つかる 数学者・秋山仁氏が説く努力の尊さと儚さ

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エルテス:ですが、そこは「わかってはいるけど、実行するのは難しい……」と大人たちも思っている気がします。

秋山:そこも段々と変化していくんじゃないかな。今は囲碁までコンピュターが人間に勝っちゃう時代だから、これまで親や教師がフォローできなかった部分をこれからITがカバーできるようになる可能性はあるね。だから、教育分野でのITの活用はそんな悪いことだとは僕は思わない。ただし、一番大事なのは、子どもに愛情を注ぎながら、上手に褒めてしかることです。その教育の原則だけは絶対に覚えておいてほしい。

努力は報われず正義は滅びる

大変な思いをして理解したことは、そう簡単には忘れない(撮影:尾形 文繁)

秋山:愛情を持って褒めてしかって自尊心を育ててあげれば、芯のある子に育ちます。そんなふうに育てられた子どもは、どんな挫折にあっても、何度も起き上がることができるし、どれだけ大きな夢でも実現できると僕は思います。

エルテス:さきほど秋山先生がおっしゃった、「好きなことを続ければ、後から才能がついてくる」ということですよね。

秋山:そう。生まれつき才能がある人なんてほとんどいません。好きで何年も続けたから、上手くなっただけ。ただし、続けたからといって、それが報われるとは限らないからね。

僕の座右の銘は、「努力は報われず正義は滅びる」という言葉なんだけれど、知っての通り、努力しても報われる人もいれば、そうじゃない人もいます。でも、この言葉は「それでも報われにくい努力を続けなさい」「正義は強くいつも勝つなんて甘っちょろい考えはやめなさい。でも、正義を貫くべき」と反語的に言っているんです。100%報われる努力なんてありません。だけれども、努力を続ける姿勢や、続けたことで得られたものは非常に尊い。

エルテス:先生ご自身の来歴を振り返ってもそう思われますか?

秋山:そうだねぇ。数学の勉強は続けたけれど、学校で褒められることはなかったね(笑)。試験の点数も、僕の半分以下しか勉強していない友だちのほうが高かったりした。僕は理解の速度が遅くて非効率。はっきり言って“バカ”だよね。

でも、そのおかげで良かったこともある。理解の速度は遅いけれど、大変な思いをして身につけたことはそう簡単に忘れない。それどころか応用力もつく。

僕より優秀な人は大体早く出世しました。でも、僕は一人地面に這いつくばって進んでいるからこそ、道端に咲く美しい花、つまり新しい数学の定理や公式を見つけることができたんです。

だから、自分がバカで良かったと思う。バカにしか見えない世界がいっぱいある。人間、その人にしか見えない世界があるからこそ、その人にしかできない仕事や役割もあるんです。それが、“個性”であり“天職”であると僕は思います。そこを育ててあげるのが、理想の教育ではないでしょうか。

加藤エルテス 聡志 RISU Japan共同創業者

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かとうえるてす さとし / Satoshi Erdos Kato

東京大学卒業。コンサルティングファーム(McKinsey & Company)・米系製薬会社等を経て、2014年にRISU Japan (risu-japan.com)を創業。 著書「日本製造業の戦略」(ダイヤモンド社・共著)、編集協力に「日本の未来について話そう」(小学館)、「Reimagining Japan」 (Biz Media LLC) など 講演 TEDxTokyo Salon 教育の未来とデータサイエンス、など

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