「才能ない」生意気な子供でも天職は見つかる 数学者・秋山仁氏が説く努力の尊さと儚さ

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「自分の目標にするものになりたい!」という気持ちが、原動力になるんです。才能なんて要らないと思うし、それはほとんどの人にないと思います。なにかやりたいことや、なりたいものがあれば、努力次第で才能は開花して、自分の野望は成就すると私は思っています。だから、野望というか志というのは非常に大事。

エルテス:志とそれに向かって努力を続けられることが大事だと。

秋山仁(あきやま じん)●1946年 東京生まれ。東京理科大学応用数学科卒業、上智大学大学院数学科を修了後、ミシガン大学数学客員研究員、米国AT&Tベル研究所科学コンサルタント(非常勤)、日本医大助教授、東海大学教授、NHKラジオ・テレビ講座講師、文部省教育課程審議会委員、科学技術庁参与などを歴任。現在、理学博士、数学者、ヨーロッパ科学院会員、東京理科大学理数教育研究センター所長、駿台予備校名誉校長、(社)全国幼児教育研究協会理事、京都芸術高等学校名誉校長、中国南開大学客員教授、(NPO)体験型科学教育研究所理事長、日本文藝家協会会員などを務める(撮影:尾形 文繁)

秋山:そうですね。さらに、もうひとつ大事なことがあるんです。それは「挫折や屈辱に耐える力」です。努力を続けられる力があっても、常に努力が報われるとは限りません。僕はやれば必ず上手くいくなんて甘いことは言いたくはない。やっても上手くいかないことはいくらでもある。でも、挫折したときや悔しい思いをしたときに、歯を食いしばって、それでも努力を止めず、むっくりと起き上がって、また一歩ずつ前進できなきゃいけない。そういう力も必要なんです。

要するに、七転び八起きのできる精神力を持たなければいけないよね。打たれ強くなくちゃいけない。頭が良くて、それなりの才能があっても、1回、2回の失敗でめげて諦めちゃう子もいるんです。そういう子たちが諦めたおかげで、僕みたいな学校では大したことのない人間が数学者になれたんです。だから、ずっと続けていくことが大事だよね。

エルテス:先生は子ども時代に、もの分かりの遅い子として扱われていたんですか?

秋山:そうだね。教師が授業で「まだ理解できない者は手を挙げろ」って言うの。それで手を挙げるともう1回説明してくれる。そして、もう1回理解したかどうかを聞いてくる。それでも、僕は理解できないから、遠慮して何も言わないでいたの。つまり、他の人に比べて非常に理解が遅いの。

ある時から、授業をあまり聞かなくなった。すべての教科を独学でやらざるを得なくなった。だから、自分の全神経を集中して、五感を総動員して、難解な抽象的な理論を理解しようと、歯を食いしばって、必死になって、理解しようとした。そうやって大変な思いをして理解したことは、そう簡単には忘れないし、応用力もつく。変な言い方だけど、もの分かりが悪かったから考える力が培われ、今こうして数学者をやっていけているのだと思う。

勉強への好奇心が子どもを成長させる

エルテス:勉強に対する好奇心があれば、どんな子どもでも成長できるとお考えですか?

秋山:はい。僕は、学びに一番必要なのは「興味・関心」だと思います。それがないと、子どもは学ぶことを止めてしまいます。だから、もし今、子どもの成績が伸びずに悩んでいるお母さんやお父さんがこの記事を読んでいるなら、まず苦手科目に対する興味づくりから始めてほしい。そうすると良い循環が生まれるんです。

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