「仕事がつまらない」と嘆く前に古典を読もう 「鉛を掘る」ような地味な仕事もバカにするな
5月も半ばを過ぎました。この4月に新入社員を迎えたのがずいぶん前のことのように思っているビジネスパーソンも少なくないでしょう。まだ研修をみっちりやっている会社もある一方で、職場によっては早くも新入社員が現場に飛び出しているケースもあるはずです。
その新入社員の中には早くも「会社に行くのが苦痛だな」と、重い足取りで出勤している人がいるかもしれません。就職活動中は熱い思いで志望した会社でも、いざその一員となると、外部からの印象とはギャップがあるのが普通。おまけに、最初は新人向けの簡単な仕事や雑用を与えられ、それをこなすだけの毎日。「こんなことをするために入社したんじゃない」「仕事なんてつまらない」と腐ってしまう人がいるのも無理はありません。
そんな新入社員はどのような心構えで仕事に臨んだらいいのか。先輩や上司はどのような言葉をかけてあげればいいのでしょうか。物事は考え方次第です。そのヒントが古典にあります。拙著『ブレない自分をつくる「古典」読書術』(日刊工業新聞社)でも取り上げているのですが、『論語』『孟子』から吉田松陰、アドラー心理学など、長年にわたり読み継がれてきた古典には現代にも通じる普遍性があります。その一つ、「国民教育の父」と呼ばれた教育者、森信三先生のエピソードを紹介します。
人はみな天から封書をもらって生まれてくる
私は今、「人間塾」という古典の読書会を主宰しています。月に1冊、私が決めた課題図書を読んだうえでディスカッションをする形式です。当初は数名ほどでスタートする予定でしたが、想像を超える参加希望者が現れて、東京・大阪・名古屋の3会場で行うことになり、延べ参加者は1000名を超えています。
この人間塾の第1回課題図書であった『修身教授録』の著者が、森信三先生です。京都大学で西田幾多郎先生に学んだ、優れた哲学者・教育者であり、今なお経済界に多くのファンを持つ人物です。
森先生はこのような言葉を残しています。
「人はこの世に生まれ落ちた瞬間、全員が天から封書をもらって生まれてくる。その封書を開いたら、あなたはこういう生き方をしなさい、と書いてある。しかし、せっかく天からもらった封書を一回も開かないで死んでいく人が多い」
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