ドイツが英国のEU残留を切望するワケ 政治・経済の両面で失うものが多すぎる

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英国がEUを離脱すると大打撃を被るドイツのメルケル首相。ベルリンで4月20日撮影(写真: ロイター/Hannibal Hanschke)

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6月23日、英国で欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が行われる。仮に離脱となれば、政治および経済への影響はEU全域に及ぶだろう。

欧州一の大国ドイツにとっての影響は特に深刻だ。現在英国のEU離脱に対するドイツの世論は分かれている。仮に離脱すればEUのリベラルさが衰退すると懸念する人もいれば、自国にだけ特別なEU加盟の形態を認めるべきとする英国の生意気さに腹を立て、離脱を望む人もいる。だが経済的影響に話を絞れば、ドイツが失うものは多く、得るものはほとんどない。

理由は大きく三つある。第一に、英国が離脱すれば多国籍企業による投資の流れに変化が起き、ドイツも影響を免れないためだ。英国に拠点を持つ外国企業は、EUにおける拠点を維持しようと英国から撤退するだろう。英国からの撤退企業は、必ずしもドイツに向かうわけではない。むしろ多くの米国企業は隣国のアイルランドに移るはずだ。

離脱しても英独の証取合併は進む

一方、英国はEU内に拠点を必要としない投資を引き付けようと、規制緩和や減税を自由に行うことができる。こうした動きにより、企業や投資家にとってのドイツの魅力はさらに弱まるだろう。

第二に、英国がEUから離脱すれば、金融センターとしてのフランクフルトの重要性が揺らぐからだ。英国はユーロ加盟国ではないが、ロンドンは今、欧州における金融センターの座を確固たるものにしている。フランクフルトに欧州中央銀行(ECB)があっても、それが必ずしも金融業の発展に不可欠な要素ではないことを示している。

ロンドンから金融業務を奪うため、EUに対しては何らかの規制措置を講じるよう圧力が強まるだろう。が、それが奏功するかは不透明だ。すでにドイツ取引所とロンドン証券取引所は、英国の国民投票の結果にかかわらず、計画中の取引所合併を進めると発表している。

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