なぜ羽田空港は「世界で一番清潔」なのか? 清掃スタッフ700人の指導役が語る「秘密」
できれば身のこなしも軽やかに。「やさしい清掃」とは、見た目にも心地よいこと。ある程度、パフォーマンス的な要素も意識する必要があります。
お客さま満足を考えながら仕事を
清掃員はお客さまによく空港のことを尋ねられます。入社時には全員に「よくある質問」という小冊子が渡されます。清掃員であっても、それにしっかり目を通し、お客さまをご案内できるようにしておくのも、仕事の1つです。
ある時、年配のご夫婦がとても困った様子で私に「ANAの搭乗口にはどうやって行けばよいかわからない」と声をかけました。
羽田空港は、第1旅客ターミナルが日本航空(JAL)系列、第2旅客ターミナルが全日空(ANA)系列と分かれています。ANAにお乗りになるのであれば、第2ターミナルになりますが、ここは第1ターミナル。残念なことに逆側に出てしまわれたようです。電車やモノレールの改札口を間違えなければ迷いませんが、羽田に慣れていないお客さまの場合、そういうケースが少なくありません。
反対側に出ても、地下でつながっています。いったん下のフロアにいけば、時間はかかるものの、目的の場所に到着できます。しかし、道順を説明して、お2人だけで向かっていただくのも心配でした。清掃の途中だったので迷いましたが、仲間に連絡を入れ、第2ターミナルまでご一緒することにしました。荷物もお持ちですし、また、迷子になったりするとお気の毒だと思ったからです。しきりに恐縮されましたが、とてもほっとしたご様子でした。無事に向こうに送り届けると、「ありがとう」と何度もお礼を言われ、やってよかったと思いました。
清掃員によっては、「お客さまをご案内することは自分の仕事ではない」
という人もいます。確かに私たちの本業は清掃です。しかし、何のために清掃をしているのでしょうか? 働く側にとっては、生活のため、おカネのためかもしれませんが、そもそもお客さまに気持ちよく空港をお使いいただくために、会社は清掃員を雇っているのです。汚れた場所をきれいにするのは「気持ちのよい空港」にするための手段の1つ。服装、身だしなみ、言葉遣い、お客さま対応。すべてクリアできてこそ、プロの清掃員だと私は考えています。
自分のステージを美しくみがきあげると同時に、いつでもお客さまをご案内でできるようにしておく。それもまた、「優しさ」のひとつです。お客さま優先で行動するのは当たり前だと思うのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら