なぜ羽田空港は「世界で一番清潔」なのか? 清掃スタッフ700人の指導役が語る「秘密」

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1つの清掃に対しては、必ず次のようなチェック体制が取られます。

1.通常の清掃
2.巡回スタッフのチェック
3.汚れている箇所を発見→センターへ連絡→清掃員に連絡
4.スポット的な清掃を実施→終了後、担当エリアへ戻る
5.報告をうけて巡回スタッフが事務処理をおこなう
6.作業完了

 

この繰り返しが清潔な空港を保つ原動力になっています。

また、選任の巡回スタッフ以外でも、課長以上など、一定の役職以上についている社員は、自分自身の裁量で随時見回ることになっています。私もそうですが、自分の目でチェックしていないと、責任が持てません。どういう状態がベストなのか、どんな素材が使われ、どういう場所が汚れやすいのかがわからないからです。

毎日とは限りませんが、仕事の合間を見つけながら、可能な時間を巡回にあてて、清掃が行き届いていない部分がないか、しっかりとチェックします。すぐ対応できない場所は、写真を撮っておき、センターや協力会社の人たちと共有して、清掃スケジュールの中に組み入れます。

清掃に終わりはありません。地味ですが、この蓄積と繰り返しが大切です。スタッフ同士の連携プレーがきれいな空港を支えているのです。

効率的な清掃方法で作業する

このシステムは長年かけて作りあげてきたものです。私が入社したころ、国内線は1つのターミナルだけでしたし、国際線ターミナルは2階建の小規模なものでした。人数も少なく、情報の共有が比較的しやすかったのです。

しかし、ターミナルの拡張とともに、清掃箇所が増え、協力会社のスタッフもどんどん増えていきました。きちんとした体制をつくり、作業手順や注意事項をマニュアルに落とし込んでいかなければ、清掃のクオリティを維持していけません。新しいターミナルがオープンするときは、とても大変でした。ある程度工事が進むと、作業員が洗面所やトイレを使えるようになりますから、私たち清掃員が事前に見学します。そのときに各施設の写真を撮って、素材や構造などを調べ、掃除の仕方を決めます。どういう洗剤や道具を使い、どういう手順で清掃するか。

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