「欲しい気持ち」を押し流す、口コミの不都合 大量の情報が買い物をどんどん億劫にする

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もう一つ特徴的なカテゴリーが化粧品・美容品だ。このカテゴリーは、実は「情報探索中」の欲求の「流去」が目に見えて多い。ある商品を「欲しい」と思ったものの、ネットなどで情報を調べているうちに、その気持ちを失ってしまうというケースだ。

かつて化粧品の買い物は、テレビCMや車内広告で新商品に惹かれ、百貨店や専門店の店頭で美容部員と相談しながら購入を検討するという行動が一般的だった。しかし2000年代に入り、ドラッグストアでの「自分で探して自分で選ぶ」というスタイルが一般化。現在は口コミサイトで自分に合う化粧品を探すことも当たり前になったが、「自分に合う情報」を探すことに疲れ、かえって欲求流去が起きやすくなっているのだ。

本当に必要なのは「善後策」ではなく…

このようなケースで重要な打ち手は「自分に合う情報」をストレスなく顧客に推奨することである。大量の情報の中で迷子にならず「自分に合う」ものへと誘導することが、買い物への不安と億劫さを軽減する。

これは化粧品・美容品だけでなく、家電、情報機器(PCやスマホ等)、健康食品、旅行、教育などの商品にもあてはまる。これらは「自分で探して自分で選ぶ」というスタイルがすっかり一般化したカテゴリーであり、同時に過剰な口コミ・ランキング情報に惑わされることも多い。この情報過剰をいかに解消するかは、各業界にとって喫緊の課題だろう。

以上に述べてきたことは、情報爆発の前で買物欲が流れるという現象に対する、当面の策と言っていい。しかし本当に必要なのは、買い物が「ストレス化」して行きづまる中で、生活者が求める買い物の本質をとらえ、新しい時代の買い物の価値を描き出すことではないだろうか。

次回は、その「新しい時代の買い物の価値」を探っていきたいと思う。

第一回:事実!日本人の「買物欲」は衰えていなかった

第二回:現代人の「買物欲」は、なぜ簡単に流れるのか

山本 泰士 博報堂買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター

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やまもと やすし / Yasushi Yamamoto

 

2003年、博報堂入社。マーケティングプラナーとして教育、飲料、自動車、トイレタリー、外食などのコミュニケーションプランニングを担当。2011年より生活総合研究所にて未来洞察コンテンツの研究・発表を担当。「総子化」「インフラ友達」「デュアル・マス」などの制作・執筆にかかわる。2015年より現職。

博報堂買物研究所は、企業の「売る」を、生活者の「買う」から考え、生活者の“買物”の構造・実態を多角的に分析し、ショッパーマーケティング・ソリューションを提供する実践型組織です。

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