クラシック初心者を虜にする音楽祭の「裏側」 今年のラ・フォル・ジュルネは「自然」がテーマ

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2015年5月2日から3日間に渡って開催された東京における「ラ・フォル・ジュルネ2015」の実績は、来場者数延べ42万7000人。有料公演数135公演、チケット販売数12万2375枚という驚異的なものだ。特筆すべきは、来場者の半数近くがクラシック初心者であること。その理由はいったいどこにあるのだろう。

クラシックのコンサートを選ぶ選択肢は、「誰が・何を・どこで行う」という順番が一般的だ。わかりやすい例を挙げると「①ウィーン・フィルが、②ベートーヴェンの交響曲を、③サントリーホールで演奏する」という順番だ。この序列を覆したところに「ラ・フォル・ジュルネ」の魅力とすごさが垣間見える。つまり、コンサートを選ぶ選択肢の順番を「①ラ・フォル・ジュルネで、②ベートーヴェンを、③アーティストが演奏する」という風に変えた点だ。そこには、「ラ・フォル・ジュルネ」というブランドへの信頼感と共に、“アーティストの名前は知らないけれどベートーヴェンなら知っている”という選択肢の広さがあり、それがクラシック初心者導入に至る大きなきっかけとなったのだ。

2016年は標題付き音楽のオンパレード

その「ラ・フォル・ジュルネ」の今年のテーマは「ナチュール - 自然と音楽」という壮大なもの。“人も音楽も自然から生まれた”というキャッチコピーの下、四季や動植物、風景はもちろん、天地創造から夜空に輝く月や星に至るまでをカバーしたプログラムは標題付き音楽のオンパレード。まさに、初心者にとってこれほど親しみやすく、コンサートを選びやすいテーマはないだろうというのが今年の「ラ・フォル・ジュルネ」。興味のある方は是非ご体験あれ(ラ・フォル・ジュルネ2016は、5月3日~5日、東京国際フォーラムで開催)。

そこで気になるのが今回のテーマの1つでもある“宇宙に関するクラシック”。なぜかといえば、僕の会社の名前がスプートニクだからだ。

ここでスプートニクについて簡単に説明しておきたい。スプートニクとは、ソ連が地球を回る軌道上に打ち上げた世界初の人工衛星の名称だ。1957年10月4日に打ち上げられたスプートニク1号は、米ソ冷戦時代における宇宙開発競争の幕を切って落とす形となったのだ。

スプートニク1号打ち上げ成功のニュースは世界中を駆け巡り、仮想敵国であったソ連にまんまと先を越されたアメリカは「スプートニク・ショック」という言葉を生み出した。ちなみにスプートニクにはロシア語で「旅の道連れ」という意味があり、村上春樹氏の小説「スプートニクの恋人」によってその知名度はさらに拡散することとなる。

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