今般の校長は、自らを「頑固」「個性が強い」と評していましたが、リーダーシップを己の「べき論」一辺倒でなく、ケースバイケースで使い分けることが有効に機能する場面も多いはず。多様な価値観を認め、譲り合うことを求められる今、自分の「べき論」≒「機能的固着」を緩めてみる試みも必要でしょう。
そうはいっても、人というのは放っておくと自分の見たいようにしか物事を見ようとしないものです。だからこそ、やはりアンガーマネジメントという「技術」で解決を図りましょう。今回「べき論」を緩めるために用いるテクニックは2つ。「べきログ」と「3コラムテクニック」です。
まずは「べきログ」です。自分がよく使う(思う)「○○であるべき」を書き出し、簡易的に自分の「べき論」を客観視することで、自分の怒りのもととなりうる状況を把握します。
ポイントは、公私の場面をあまり深く考えず、ランダムにどんどん書き出してみることです。「社会人は黒髪にすべき」「子どもはスポーツをするべき」「部下は上司よりも遅く帰るべき」……などなど、20ぐらい挙げてみましょうか。もしかすると、書き出して眺めるだけで「こんなの独善的な自分ルールにすぎない!」と気づくものがあるかもしれません。
思考を3つに分解すると「ゆがみ」が見えてくる
さらにここから、自分の「べき論」に「ゆがみ」があるか否かを分析し、ゆがみがあれば矯正する(書き換える)ために「3コラムテクニック」を講じてみましょう。これは怒った出来事について、「怒った事実」「自分の『べき論』」「『べき論』の書き換え=リフレーム」の段階別に確認し、3段階目で、言葉通り「べき論」を書き換えるという作業です。
たとえば、①部下の派手なスーツの 色に腹が立った(怒った事実)、②会社員は地味な格好をすべきだ(自分の「べき論」)、③当社にはドレスコードがないので仕方ない。自分のファッションセ ンスが乏しいだけかもしれない(「べき論」の書き換え=リフレーム)……といった具合です。
他人に害のない「べき論」もたくさんあるので、ムリにすべてを書き換えることはありませんが、自分の信念を第三者的視点で見つめてみることで、自分の心の許容度の狭さに気づくこともありますよ。
学校の教師も職場のリーダーも、十人十色であるメンバーの性格・志を自分色に染めようとするのはムリな話です。今般のように反発が出ることは必至ですし、その結果離れていこうとするメンバーも出てしまうでしょう。うまくお互いの個性や「べき論」を尊重し、高めあえるような人間関係を築いていきたいものですね。
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