片山幹雄・シャープ社長--日本でのものづくり見直し、地産地消型へ仕組みを大転換
シャープが4月に開いた経営方針説明会で、片山幹雄社長は経営戦略の大転換を宣言した。
昨年後半から液晶テレビの世界需要も急速に冷え込み、同社は亀山第1工場でのパネル生産を停止。唯一のテレビ用パネル生産拠点となった亀山第2工場も、一時は稼働率を5割にまで落とす大規模な生産・在庫調整を余儀なくされた。液晶工場停止に伴う多額の特別損失も発生し、昨年度の最終損益は1258億円もの赤字に転落。4月以降、中国需要拡大などで工場の稼働率自体は急激な回復を見せてはいるが、今年度も厳しい業績が続く見通しだ。
そうした中で、片山社長が口にしたビジネスモデルの転換。これまで同社は技術流出防止などを理由に液晶パネルの国内生産にこだわってきたが、今後は投資の舞台を海外に移す。しかも、新設するパネル工場は現地企業との合弁形態とし、シャープの出資比率は5割未満にとどめるという。片山社長にその背景と狙いを聞いた。
--4月の会見で、ビジネスモデルを変えると宣言した。
液晶テレビの例で言うと、今まで当社は日本で大きな投資をして基幹部品のパネルを作り、それを海外の消費地でテレビに組み立て、販売する手法をとってきた。要は、設備投資にしろ開発投資にしろ、「ものづくり」をおひざ元の日本でやってきた。そういった仕組みを見直し、世界の消費地で基幹部品から完成品組み立てまでやる「地産地消」型へ変える。
--なぜ今なのですか。
われわれの業界が二つの大きな変化に直面しているからだ。景気が回復すれば、いったん縮んだ欧米の需要もある程度は戻るだろう。しかし、欧米の薄型テレビの普及率はすでに高くなっており、景気が戻っても従来のような高い市場成長率はもはや期待できない。一方で、中国における液晶テレビの需要がどんどん伸びている。これからの世界の需要動向を考えた場合、伸びる地域が中国をはじめとする新興国であることは疑いようがない。
二つ目が為替の問題だ。日本の製造業は過去30年以上にわたって円高と戦ってきたともいえるが、今、直面している為替の問題は、過去の円高局面よりも大きな意味を持つ。というのも、われわれの現在の競争相手は韓国であり、台湾であり、中国の企業。こうしたアジア諸国は大幅な自国通貨安が続き、日本企業にとっては著しく競争環境が不利になってしまった。