片山幹雄・シャープ社長--日本でのものづくり見直し、地産地消型へ仕組みを大転換

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--稼働を停止した亀山第1工場をめぐって、中国企業への売却・合弁化交渉が報じられました。これが合弁型地産地消戦略の第1号モデルになるのでしょうか。

中国への(亀山第1の)設備売却については、選択肢であることは否定しない。中国にはまだ液晶テレビ用の大型パネル工場自体が存在しない。今の為替で、亀山第1で作ったパネルを海外に輸出しても採算は厳しいが、ラインそのものを中国へ移転し、現地向けに中型サイズ以下のパネルを生産するなら十分再生できる。ただし、現地で新設という選択肢もあり、亀山第1の設備売却が決まっているわけじゃない。

--国内でパネルを生産する亀山第2、建設中の堺新工場は、どういった位置づけになるのでしょう。

世界に占める構成比は下がったといっても、国内には年間1000万台近い薄型テレビの市場がある。亀山第2はそうした日本向けの地産地消工場という位置づけになる。一方、今秋に稼働する堺は大画面サイズで高いコスト競争力を持つ工場で、特に60インチ台の潜在市場が大きな北米、中国向けが中心になると思う。

--堺新工場の建設を決めた2007年当時と現在では、環境が大きく変わりました。この経済環境下で堺工場を動かせば、相当な赤字を出すのではありませんか。

心配は無用だ。当社はこれまで、すべての液晶工場で稼動初年度からきちんと利益を出してきた。堺も稼動時から高い歩留まりと量産へ持ちこむ垂直立ち上げを実現する。償却は(5年間均等の)定額法で、稼動初年度でも工場の期間損益はニュートラル以上(=黒字)を計画している。

本来なら堺新工場で作ったパネルをすべて自社の液晶テレビで消化するのが理想だが、当社の世界における最終製品の販売力、ブランド力を考えると、それはさすがに難しい。だから、堺はパートナーとなるソニーに限らず、他の家電メーカーにもパネルを積極的に供給・販売していく。すでにいろんなテレビメーカーとの商談が進んでおり、予想した以上の注文が集まっている。

当然といえば当然だ。堺は一枚のガラスから40インチが一度に18枚、65インチでも6枚取りが可能で、世界を見渡しても、堺ほど大画面サイズのパネルを効率よく作れる工場はどこにもない。韓国や台湾のパネルメーカーがいずれ同じ巨大ガラスサイズの工場を造ってくる可能性はあるが、先行して立ち上げる堺工場は為替を考慮しても当面はコスト競争力で優位に立てる。秋の工場稼働後は、世界中のテレビメーカーが大画面液晶テレビで堺のパネルを搭載し、パソコンにおけるインテルのような「堺インサイド」現象が起きるだろう。

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