そもそも、わが国の国債の最長の満期は40年だが、国債市場の需給を踏まえて過半の満期は5年以下となっている。0.02%に下がったといえどもそれは10年満期の国債であり、その金利で固定されるのは最初の10年間だけである。
10年後に借り換えるときには当然そのときの金利で借り換えなければならない(満期が短ければ超低利の恩恵はもっと短期で終わる)。そのときにデフレが終わっていれば、今より高い金利で借り換えなければならない。
先を見越して国債残高を抑制できるか
マイナス金利導入はデフレ脱却が目的であることをすっかり忘れて、目先の超低利に飛びついて国債を増発しては、結局、将来にツケを回すことになる。また、目下、日銀が大量に国債を買い入れており、政府が国債を増発しても国民の負担にならないから財政出動してもよい、という見方も誤りである。このことは、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「日銀が買う国債は、誰が責任を負うのか 異次元緩和の『都市伝説』のカラクリ」で述べており、そちらを参照されたい。
では、金利は上昇せず、マイナス金利導入によって生じた超低利で国債が将来も借り続けられると想定したらどうだろうか。この想定は物価上昇に伴う金利上昇がないと認めれば論理的だが、それはデフレから脱却できないことを認めたと言っても同然である。
一方、デフレから脱却してインフレの経済になったとき、金融政策によって国債金利を低く抑えられると思っていれば、それは誤りである。インフレの経済では、国債金利を無理やり低く抑えることは、できないか、できたとしても、マクロ経済において過度な悪影響が及ぶかのどちらかである。
デフレから脱却できれば、基本的には物価上昇圧力が大なり小なり作用する経済となる。そうした中で、統制経済や計画経済ではなく、市場経済において、物価上昇を金利に反映させるのが当然で、その金利上昇圧力を政策的に押さえつければ、その分金融政策は過剰に緩和的にせざるをえない。物価が過剰に上昇して消費者が損失を被るか、賃金上昇が(一時的であれ)物価上昇に追い付かず労働者が損失を被るか、債権の実質価値が目減りして債権者が損失を被るか、いずれかが起きる。万一金利上昇を政策的に抑制できても、よいことはない。
こう考えれば、目先の金利低下に惑わされて国債を増発しても、デフレ脱却を目指すのだから、(少なくとも物価上昇分の)将来の金利上昇は避けられない。そのことを見越して国債残高をできる限り抑制しないと、デフレ脱却後に過剰な負担を負わされる羽目になる。ここが、マイナス金利導入の先を見越したキーポイントである。
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