残業減らす働き方の功罪をとことん考えてみた 給料がその分減らず逆に増える枠組みも必要だ

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公開収録で働き方改革について徹底的に議論した(写真:NHK大阪放送局)
少子高齢化によって労働力の主力となる生産年齢人口(15~64歳)の減少が進む中、価値観の変化やテクノロジーの発達なども相まって、従来の「働き方」を見直す動きが広がっている。今年4月には「働き方改革関連法」が施行された。いまだ日本企業にはびこる長時間労働の是正や低い労働生産性の向上などの課題に、企業も労働者も向き合っていかなければならない。
NHK大阪放送局が制作する「ルソンの壺」は、11月24日(日)の最新放送回(関西地域で7時45分~8時25分放送)で初めて公開収録を開き、「働き方改革」に取り組む関西企業3社の経営者を招いて議論した。登場したのは、山田製作所の山田雅之社長、富士運輸の松岡弘晃社長、minittsの中村朱美代表取締役。このうち小説家で番組コメンテーターの真山仁氏、司会の渡邊佐和子アナウンサー、落語家で壺ナビゲーターの桂吉弥氏と、3人の経営者とのやり取りを、本編に収まりきらなかった部分も含めてお届けする。

1日約5分の短縮でも余裕が生まれる

渡邊 佐和子(以下、渡邊):山田製作所はモノを探す時間のムダに気づき、工具の使用中には、誰が使用しているのか、名札を貼ることでわかるようにしたり、文房具は、型をくり抜いて定位置を決めたりなど、小さなことからコツコツと工夫されていますが、山田さんはこれをどのようなきっかけで始めようと思われたのですか?

山田 雅之(以下、山田):当社は製缶板金、板金加工、プレス加工や製缶加工から溶接、組み付け調整まで一貫する事業を手がけています。商品自体に付加価値を付けられる業種ではないので、工場自体に付加価値をつけていくという「サイエンス活動」を20年前からスタートし、今も続けています。

真山 仁(以下、真山):整理整頓は、どんな仕事でも必要とされますが、忙しくなると、つい後回しにしがちです。

山田製作所の山田雅之社長(写真:NHK大阪放送局)

山田:当社の業態を考えると、お金を生んでいるのは溶接機が火を噴いている時間だけです。「モノを運ぶ・探す」「お客さまからの問い合わせに答える」などの時間は、お金を生んでいません。

真山:実際に計算すると1カ月に2時間、労働時間を短縮していると伺いました。1カ月に25日働くとすると、実は1日当たり約5分です。一見とても短いようですが、効率よく仕事ができるようになって余裕が生まれ、以前よりも発注を受けられるようになっているのでは?

山田:おっしゃるとおりです。受注は増えました。

真山:仕事の効率が高まって売り上げが上がり、利益も増えるので社員の給料も上がる。

山田:そのとおりです。そこを目指しています。

真山:社員の給料を上げるためには、さらなる仕事の効率化が必要ですか?

山田:これは永遠の課題ですね。残業が減ることは残業代が減ることにつながるのですが、その分の基本給を上げるところまでは至っていないのが現状です。

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