
刺身包丁が滑らかに動き、柵のマグロが切り分けられていく。そのサイズはひと口大と呼ぶにはかなり大きく、見るからに食べ応えがありそうだ。マグロに続いてブリ、サーモン、タイなどにも包丁が入り、丼の酢飯に盛り付けられていく。
調理しているのはトチョニカペペさん(25歳・以下、ペペさん)。金髪と黒髪のツートンカラー、首や手の甲や指先まで入ったタトゥー、耳や口に光るピアス。一見すると和食の料理人とは思えない風貌だが、栃木県足利市にある海鮮料理や「まぐろ 加一」のれっきとした女将である。

クラスでは孤立することも多かった
ペペさんの本名は、塚越永湖(つかごしとうこ)さんという。あるとき、初対面の人に自己紹介をしたところ、「え、トチョニカペペ?」と聞き間違えられ、それから愛称として定着した。
彼女を有名にしたのはSNSだ。厨房で調理をする様子や、個性的なファッションを身にまとったプライベートを発信し、TikTokとInstagramのフォロワーはそれぞれ15万人超にもなる。
そんなペペさんの生い立ちや女将としての日々、大好きだという家族への思いなどを取材した。
「まぐろ加一」は約80年前、ペペさんの曽祖父が創業した。戦後でお店もろくにない時代、リヤカーで野菜や魚の販売をしたのが始まりだった。その後、魚屋として店舗を構え、2000年に飲食店に業態変更。店名に「まぐろ」と掲げ、海鮮に特化した店として、昼はランチ、夜は通常営業をしている。

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