
お互いに婚姻の意思があって2、3年間は同居していることが、一般的な事実婚の定義のようだ。しかし、同居期間よりも結婚の合意に至った経緯と精神的なつながりのほうが大事なケースもあると思う。本連載では筆者の独断で「事実婚」カップルを認定し、取材対象としている。
婚姻届は2年後に出す予定
大阪市内で働いている会社員の高井順一さん(仮名、36歳)の結婚相手は、他県で学校に通いながら一人暮らしをしている水野久美子さん(仮名、32歳)。それぞれの左手には結婚指輪がはめられていて、久美子さんが学校を卒業して大阪に戻って来る2年後に婚姻届を出す予定だ。
「私の家族は仲良しですが、母、姉、叔父などの離婚経験者ばかりです。婚姻届には重みがまったくありません(笑)。彼女のほうは親からネグレクトを受けながら育ったので天涯孤独で、結婚願望はなかったようです。『婚姻届を出さない道もあるよね』と話しています」
それでも法律婚を望むのはなぜか。勤務先からもらえる休暇や手当を久美子さんと一緒に使えるから、と順一さんは割り切っている。なお、身体障がい者である久美子さんが自立するための学校を卒業するまではお互いに独身一人暮らしのほうが経済的メリットがあるので今は離れて生活している。
「2年後、彼女が安心して暮らしやすい地域でバリアフリーの部屋を借りられるように、いまはせっせとお金を貯めています。ボーナスをまるっと貯金するなんて以前の自分では考えられなかったことです」
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