残業減らす働き方の功罪をとことん考えてみた 給料がその分減らず逆に増える枠組みも必要だ
1日約5分の短縮でも余裕が生まれる
渡邊 佐和子(以下、渡邊):山田製作所はモノを探す時間のムダに気づき、工具の使用中には、誰が使用しているのか、名札を貼ることでわかるようにしたり、文房具は、型をくり抜いて定位置を決めたりなど、小さなことからコツコツと工夫されていますが、山田さんはこれをどのようなきっかけで始めようと思われたのですか?
山田 雅之(以下、山田):当社は製缶板金、板金加工、プレス加工や製缶加工から溶接、組み付け調整まで一貫する事業を手がけています。商品自体に付加価値を付けられる業種ではないので、工場自体に付加価値をつけていくという「サイエンス活動」を20年前からスタートし、今も続けています。
真山 仁(以下、真山):整理整頓は、どんな仕事でも必要とされますが、忙しくなると、つい後回しにしがちです。
山田:当社の業態を考えると、お金を生んでいるのは溶接機が火を噴いている時間だけです。「モノを運ぶ・探す」「お客さまからの問い合わせに答える」などの時間は、お金を生んでいません。
真山:実際に計算すると1カ月に2時間、労働時間を短縮していると伺いました。1カ月に25日働くとすると、実は1日当たり約5分です。一見とても短いようですが、効率よく仕事ができるようになって余裕が生まれ、以前よりも発注を受けられるようになっているのでは?
山田:おっしゃるとおりです。受注は増えました。
真山:仕事の効率が高まって売り上げが上がり、利益も増えるので社員の給料も上がる。
山田:そのとおりです。そこを目指しています。
真山:社員の給料を上げるためには、さらなる仕事の効率化が必要ですか?
山田:これは永遠の課題ですね。残業が減ることは残業代が減ることにつながるのですが、その分の基本給を上げるところまでは至っていないのが現状です。