不況のときに松下幸之助がいつも言っていたのは、「風が吹くときは絶好や。凧がようあがる」ということであった。つまり景気の悪いときにこそ改善、改革はやりやすいということである。
その改善、改革をするにあたっては、「今あるものに継ぎ足すな。今あるものをゼロにして、どうするかを考えよ」と強調した。
ゼロから発想すれば安く出来る
昭和初期に松下電器が作ったアイロンは、それまでの炭を入れるアイロンに比べて非常に便利だったが、当時のおカネで5円という高額のため、一般庶民には手が出なかった。
そのとき、安ければ必ず売れると判断した松下は、今あるアイロンを見て新しいアイロンを考えるのではなく、ゼロから考えて新しい製品を作るように指示を出す。そして3円のアイロンが出来上がった。
同じような例がたくさんある。昭和36年ごろ、横浜にあった松下通信工業はカーラジオをトヨタ自動車に納めていた。あるときトヨタから即刻5%値段を引き下げて、向こう半年間でさらに15%下げ、合計20%値引きしてくれという申し入れがきた。貿易の自由化に直面し、アメリカなど海外の自動車と太刀打ちするには、もっと値段を引き下げなければならない。それに協力してほしいのだという。
事業部は困り果ててしまう。3%しか利益がないのに、20%も値引きをすればたいへんな赤字になるからだ。
これに松下は、どう応じたか。
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