「トヨタの言うことをそのまま聞こう」
たまたまその検討会議をしている部屋にやってきた松下は、検討を重ねている社員の姿を見て言った。
「トヨタさんが要求する値引きはかなり厳しい。けれども将来の日本の自動車産業の姿を考えると、国際競争に勝たなければならん。この際トヨタさんの言うことをそのまま聞こうやないか。協力しようやないか。ここにある製品はないものと思って、まったく新しいカーラジオを一から作るという発想でやってみよう。
出来んと言えば、うちも成り立っていかないし、トヨタさんも成り立っていかない。それでは日本の国も成り立っていかないことになる。一企業という立場ではなく、国家のことを考えて、これに取り組まんといかん」
その結果、一年後には20%安くしてもなお10%の利益があるカーラジオが出来上がった。
ぎりぎりまでやってこそゼロに立ち返れる
日々の積み重ねとともに、その一方で、改善、改革をしていくときには、今あるものに継ぎ足すのではなく、全部否定してゼロから発想してみる勇気を持つことも重要である。そこから大きな飛躍が生まれる。
もっとも、最後に付け足しておこう。ゼロからの発想をする勇気を持つためには、普段から懸命の努力をしていることが絶対に必要なのだ。普段さぼっていれば、「あと少し継ぎ足せる」と思ってしまうのが人情である。ぎりぎりまでやっていればこそ、私たちはゼロにまで立ち返れるのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら