ある若手の経営者が松下幸之助のもとに話をしに来たときのことである。
その人が熱心に、日本人は働きすぎる、今まではそれでもよかったけれど、これからもあまり働いていると、世界中から批判されるようになる。だから、できるだけ遊ぶように心掛けるべきだ、というような話をしたらしい。
その客が帰ったあと、松下は次のように私に語った。
働かなければ遊ぶこともできない
「あんたも遊ばないとあきませんよ、趣味はなんだすか、と聞かれた。趣味といっても、わしにはこれといって何もないわな。仕方ないから、趣味は仕事ですなあと答えたんや。そしたら、人間は人生を楽しむために生まれてきたんやから、そのために仕事をやっておるんだから、仕事ばかりということはいけません、と。そんなことを話して帰っていったわ。
そういう考え方にも一理あるな。けど、遊ぶことが大事で、働くことは二の次だという言い方は、どんなもんやろうかな。やはり、まず働くことの大切さを考えておかんといかんな。働くことが先でないと、おカネもないから、きみ、遊ぶこともできんやないか」
趣味に生きるのだという人ならば、遊びが先でもいい。しかし、成功を目指すというのならば、まず働いて、次に蓄えて、それから遊ぶ。それが考え方の順番である。ほかの方法などあるわけがない。
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